
「顧客がどう認識するか」に着目する
ブランドに関わる言葉として「ブランドイメージ」「ブランドアイデンテイティー」「ブランドエクイティ」などが使われています。これらにも多くの混乱と誤用があります。
まず、「ブランドイメージ」とは一般的には、顧客がそのブランドをどのように認識するかを形成・維持し、時には修正するプロセスとされています。形成・維持のためにはブランドを定義し、ブランドのメッセージやビジュアルを一貫させ、全てのマーケティングチャネルで統一されたコミュニケーションが重要だとされています。
次に「ブランドアイデンティティー」は、企業起点の「こういうブランドでありたい」「こう思ってほしい」という願望です。企業がブランドをどのように位置付け、表現しようとしているかについての内部的な観点です。ブランドの性格、価値、ユニークな特徴などを定義し、顧客に対して一貫したイメージを提供するための要素を含みます。
そして、3つめが「ブランドエクイティ」です。経営学者のデービッド・アーカー氏が提唱したブランドを管理する概念で、ブランドエクイティは、顧客の認識や感情に基づくブランドの強さを示します。ブランドの価値を測定し、強化するプロセスとしてマーケティング活動の中で活用されています。

アーカー氏は、ブランドエクイティを「ブランド認知」「知覚品質」「ブランドロイヤルテイー」「ブランド連想」、そして「プロプライエタリアセット(独自の資産)」の5つの要素に分解します。これを管理することで、企業は競争優位を築き、長期的に顧客基盤を保持し拡大することが可能だとしています。
ブランドアイデンテイティーは「企業がどう見せたいか」に関するものであり、ブランドエクイティは「顧客がどう記憶しているか、感じているか」に関するものであることを最初にご理解いただきたいです。これらの言葉は、よく混同されて使われています。
言葉が混在していることで起こり得る弊害
それらの言葉が混同されると、ブランディングをする上で、自分たちの視点で取り組みたいのか、一顧客が望んでいることを実現しようとしているのかが曖味になって、出発点を誤ることになります。
ブランドエクイティを強化したいという相談はよく受けます。ですが、エクイティの指標が上がることで、対象ブランドの売り上げや利益が増えるなど、成果に直結すると考えるのも大きな誤解です。
ブランドエクイティは顧客から見たブランドに対するイメージ認識にすぎません。それを強化すると、売り上げが増えることはあるかもしれませんが、必ずしもそうとも限りません。顧客が認識しているイメージであってもそれは、購入と無関係のイメージかもしれないからです。
例えば、ブランドエクイティを強化したいと考えたときに、自分たちがどう思われたいかという企業起点と混同してしまうケースもあります。ブランドをつくったオーナーの思いを強く反映した広告やWebサイトをつくり、PRで打ち出す。それにより狙い通りのイメージの認知度が上がったのに、顧客の購入行動にはつながらず、売り上げが増えないという結果に陥ってしまいます。
これは、顧客が対象ブランドの購入を検討する上で、そのイメージを重視していない場合に起こる誤算です。顧客が価値を見いださないイメージを、ブランディングの名の下に、顧客に押し付けているにすぎません。顧客の購入意思は変わらないし、購入行動も起こりません。

購入行動とブランドエクイティの関係性
企業が広告などで伝えたいことを、顧客は、認識はします。ですが、顧客が価値を見いだす便益や独自性が、そこになければ、顧客の心は動かず、行動も変わりません。全く購入につながらない、企業として押し出したい「ブランドエクイティ」ができあがり、事業上の成果につながらない無駄な投資になってしまいます。
顧客は、商品・ブランドに対して様々なイメージを抱いています。そうした複数のイメージや認識の中に、「買いたくなる」「買い続けたくなる」要素の両方が含まれます。売り上げを上げることを考えるのならば、これらのうち購入につながるようなイメージの認識を構築する活動が理想的です。それが結果的に顧客が望む、購入行動につながる重要なブランド資産、すなわち「ブランドエクイティ」となるのです。
企業起点のブランドアイデンティティーと顧客起点のブランドエクイティが混在していると、売り上げを上げるべきために重要な要素と、企業のエゴとの区別ができなくなり、無駄な投資が増えます。売り上げを上げたい、購入者を増やしたいのであれば、購入につながる理由となる便益と独自性を打ち出すべきです。
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