2-5-24:「ニューバランス」の事業成長の予測

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
ニューバランスは高いリピート率と潜在顧客の獲得により、安定的な事業成長が期待される指標を示しています。
2-5-24:「ニューバランス」の事業成長の予測
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Geminiで生成

スニーカーブランドで事業成長の指標を考える

ここまで紹介したNPIを踏まえて、本項からはブランディングの指標について、実例をもとに解説していきます。まず、次のランキングをご覧ください。

これは、国内で流通する11のスニーカーブランドに関して、2021年12月に筆者が実施したインターネット調査の結果に基づくものです。なお、調査対象の11ブランドは支援先ではなく、第三者の立場で実施しました。

1位は「ニューバランス」で、47.7%と、ほとんど半数に近い数値となっています。続いて2位は「ナイキ」で40.8%、3位が「コンバース」で28.6%、以下「アディダス」「アシックス」が並びます。これが何の数値に基づくランキングかお分かりになりますか。

答えは、前項で解説したu-NPI、つまり「各ブランドの既存顧客に対して『次も同じブランドを買いたいか』(=既存顧客における次回購入意向)を尋ねた結果」です。

例えば、ニューバランスでは、同ブランドのスニーカーを所有している既存顧客のうち、47.7%が「次も同ブランドを買いたい」と答えました。ランキング上位のブランドはいずれも、既存顧客が「リピート購入する確率が高い」ブランドと言えます。

この割合が高いほど、いわゆるロイヤルティーが高く、売上高・利益の面で安定的なブランドというわけです。逆に低いブランドは、既存顧客の離反リスクが高い状態です。

NPIで分かる将来の購入意向

次に、もう一つの指標を先ほどのランキングの項目に加えた、以下の表をご参照ください。こちらも1位と2位は変わりませんが、3位はアディダス(12.0%)になりました。ただ、1位のニューバランスでも18.1%で、全体的に最初の指標よりも数値が低くなりました。

こちらは調査対象者全体における「NPI(次回購入意向)」を示した人の割合です。ブランドは認知しているものの、購入経験がない層の数値が高ければ、潜在的な新規顧客を多く抱えていると読み解けます。ブランドに対して良いイメージや評判が認識されており、ただ知っている人よりも「購入を見込める見込み顧客」である可能性が高いと考えられます。

事業予測に有効な指標はあるか

ここで掘り下げたいのは、多くのマーケターが課題を抱える「ブランディングの測定指標」です。

かつて、筆者もブランディングの測定指標に悩んできました。一般的にブランディングの指標としては認知度や好感度、NPSなどがよく使われます。ただ、これらの数値が高くなっても、必ずしも事業がうまくいくわけではありませんでした。

そのため、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に勤めていたころからずっと「ビジネスの今後を予測できるような先行指標がほしい」と考えていました。

本シリーズの冒頭でも触れましたが、ブランディングの成功例として一般的に語られるのは、どれも既に成功したブランドであり、第三者による後解釈がほとんどです。

成功しているブランドは、結果として好感度や各種イメージの指標が高いため、それらの指標を高めれば売れるという誤解を招いています。“ブランディング活動”と称して、ブランドに対する認知度や好感度を獲得するための広告などを出稿し、狙い通りに認知度や特定のイメージが向上したとしても、ビジネスの結果に反映されるとは限りません。認知度、好感度、NPSは高まったものの、売り上げは変わらないというケースを数多く見かけます。

たどり着いたブランディングの新指標

ブランディングが、事業成長のために行うマーケティング活動の一つならば、当然ブランディングの成功は、事業成果に反映されるべきです。

「ブランドが強い」「ブランディング投資をした」と話す一方で、売り上げや利益につながらないという事態は本来あってはなりません。そう考えて、新しい指標も模索した末に、NPIの発案に至りました。

NPIは対象マーケットの顧客全体での、u-NPIはそのブランドの既存顧客の中での次回購入意思を数値化したものです。事業とは新規顧客を増やしながら、既存顧客の継続率を向上させ、離反率を下げることで、積み上げ式に成長するもの。NPIが高ければ高い投資対効果で新規顧客の開拓が見込め、u-NPIが高ければ離反を招きにくい。そのため、売り上げと利益が積み上がるブランドの成長性を示す先行指標になり得ると考えました。

この指標は2019年に拙著『顧客起点マーケティング』(翔泳社)で発表し、その活用は海外にも広がっています。今のところビジネスの先行指標としてNPIを越えるものは見つかっていません。筆者が代表を務める会社(Wisdom Evolution Company)では、ブランディングの指標としての有効性を引き続き研究しています。

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《西口一希》

ブランディングの誤解