2-5-3:ブランディングに対して過剰期待が起きている理由

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
成功したブランドの背後には長期間の試行錯誤と歴史があり、単に要素を強化すればよいわけではありません。
2-5-3:ブランディングに対して過剰期待が起きている理由
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Geminiで生成

「〇〇を満たせば強いブランドになる」という誤解

では、なぜブランディングに対して、過剰期待が起こっているのでしょうか。それは既に成功した企業事例を基にした「原因と結果の履き違え」に理由があります。

世の中のブランディングの成功例といわれるものは、結果として既に大きくなったブランドを見て、第三者がその重要性を説いていることが大半です。また、ブランディングに関する様々な指標のほとんどは、ブランドが強くなった結果論ですが、それらが強いビジネスを生み出すための原因として誤解されています。

ブランド評価で、おそらく世界的に有名なのが、ブランディング支援のインターブランドが毎年発表している「ベスト・グローバル・ブランズ」というランキングでしょう。

筆者も長年、この指標は参考にしています。2023年版のランキング上位を見れば「アップル」「マイクロソフト」「アマゾン」「グーグル」「サムスン」「トヨタ」「メルセデス」「コカ・コーラ」「ナイキ」「BMW」が並びます。いずれのブランドも全て有名で、納得感があります。

このランキングは、次に提示する、ブランド強度評価モデル10要素に基づいていることが公表されています。

【社内要素】
志向力/結束力/共感力/俊敏力

【社外要素】
独自性/整合性/共創性/存在感/信用度/愛着度

ランキング入りするようなブランドは、「強いブランドになったから、これらの10要素が備わっている」のでしょうか、それとも「これらの10要素を強化すれば、強いブランドになる」のでしょうか。もちろん、答えは前者です。

インターブランドのランキングは、既に多額の売り上げと利益を生み出し、多くの顧客を抱えている強固なブランドについて、10要素で評価。同業種の他のブランドと比較し、ブランド価値を算定しています。10要素は既に出来上がっているブランドの要素分解をしたものにすぎません。

このランキングや評価基準は、強いブランドに共通する素晴らしい参考指標です。ただし、この10要素を強化すれば、強いブランドをつくれるというわけではありません。

重要なのは、このような強いブランドが、創業から現在の強固なブランドになるまでに、何をやったのか、その歴史を理解し、そこからブランド創出への具体的な示唆を得ることです。

強いブランドの多くは、何十年という歴史の中で、様々な商品・サービスの開発、事業の失敗と成功の積み上げ、試行錯誤があり、その中で、多くの顧客を獲得し、維持し続けています。何十年の歴史で積み上げた結果でしかありません。

「アップル」のブランドはどう確立されたのか

「アップル」がその典型例です。同ブランドはインターブランドのグローバルランキングで11年連続1位を維持し、ブランド価値が5000億ドルを突破した初めてのブランドです。まさに世界一と言えるブランドです。

インターブランドのグローバルブランドランキングが始まった2000年時点では、アップルは36位でした。そこから価値を高め、初めて1位となったのは13年のことです。それまで1位だったコカ・コーラから首位の座を奪い、世界で最も価値のあるブランドになりました。

アップルの株式市場における時価総額は、23年12月28日時点で3兆ドル(約420兆円超)を超え、経済的にも圧倒的に成功しています。

革新的な商品・サービスを提供し続け、美しいデザイン、秀逸なユーザーエクスペリエンス(UX)、歴史に残るテレビCMなど、アップルのブランドをつくり上げている理由を挙げれば枚挙にいとまがありません。

ブランディングの成功事例として繰り返し取り上げられ、アップルのフォント、デザインなどは、様々な分野で模倣されています。ビジネスやマーケティングに関わる方であれば、このような強いブランドをつくりたいと思うのではないでしょうか。

ですが、アップルですら、「ブランディング」で数々の失敗を積み重ねています。次項では、その実例をひも解きます。

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《西口一希》

ブランディングの誤解