2-5-2:ブランディングの目的は、記憶・識別しやすくすること

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
ブランディングは商品やサービスを記憶しやすく、識別しやすくするためのものであり、売上増加に直接つながるものではありません。
2-5-2:ブランディングの目的は、記憶・識別しやすくすること
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ブランディングに取り組めば業績が上がる?

革新的な印象を与える広告をつくったり、商品を現代風のデザインに刷新したりする、いわゆる「ブランディング」に取り組めば業績が上がるという誤解が広がっています。

ブランディングは定義が曖味であり、「マーケティング」と同様に、意味や目的が曖味であり、様々な過剰期待を生んでいます。結果、非常に多くの無駄なお金と人材が使われています。

ブランディングをすれば、どうやら商品・サービスが売れるらしいという期待から派生して、「ブランドマーケティング」という言葉が出てきました。そこから、さらに様々な誤解が生じています。

そもそも「ブランド」という言葉の定義がばやけているため、ブランディングに対して過剰期待が生まれます。ブランディングに取り組むこと自体を目的に設定すると、多くの場合はうまくいきません。

「かっこいいデザイン」「雰囲気のよさ」「情緒的である」「流行の最先端」であることをブランドと言う人は多いのですが、それで物が売れるカテゴリーは実は少ないのです。

便益や独自性を、競合から区別してもらう

「ブランディング」への過剰期待と誤解を生む原因の1つとなっているのが「ラグジュアリーブランド」に代表される、ファッションや価値感、生活スタイルを表現するカテゴリーです。特定の情緒的な価値観や哲学、思想、歴史を表現したスタイル、デザイン、クリエイティブ、ストーリーで商品・サービスを提案します。そこに識別記号としてのブランドロゴや名称が付いているから、競合や同類と混同されずに継続的に売れ続けます。

ですが、一般的な消費財やBtoB(企業間取引)事業の場合、情緒的なスタイルやデザインの商品を作ったら、物が売れるかというと必ずしもそうではありません。デザインが美しいシャンプーを出すことで、一時的な売り上げを得られても、それが継続的な売り上げの要因になることは多くありません。

クルマのような耐久消費財であっても、ラグジュアリーと呼べる高価格帯を除く90%以上の販売数を担うボリュームゾーンでは、デザイン性が高いことで好感度は高まるかもしれませんが、必ずしも購入理由にはなりにくいのが事実です。デザインを購入の主要因としてクルマを選ぶ顧客層は、全体としては非常に小さいです。

ブランディングの主たる目的は、商品・サービスを売るためではなく、あくまで商品・サービスを記憶し、識別しやすくするためのものです。ブランディングそのものが、買ってもらうための「便益」になるわけではありません。

BtoC (消費者向け)、BtoBを問わずほとんどのカテゴリーにおいて、購入される理由、継続的に購入してもらえる理由は機能的な便益や独自性です。ブランディングとしての記号化は、それらの便益や独自性を競合や同類から区別するものです。

ブランディングは、付加的な価値として情緒的、感情的な好感度を生み出すことはできますが、好感度だけでは購入にはつながらない可能性が高いことを理解しておく必要があります。そもそもの商品・サービスの便益や独自性が弱ければ、ブランディングに大きな投資をして、ブランドに対する好感度などを向上させられたとしても、継続的な購入にはつながりません。

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《西口一希》

ブランディングの誤解