2-5-10:ブランディング投資が有効な場合とそうでない場合

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
商品や特徴の本質的な便益を伝え、ブランディング活動に投資して差別化を図ることが重要です。
2-5-10:ブランディング投資が有効な場合とそうでない場合
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Geminiで生成して

注力点が異なる2つのパン店

前項では、顧客起点に立ち返ることが、真の便益を見つける上で重要だと述べました。

一つ例を挙げましょう。ある2つのパン店があるとします。一方を仮に「黒川パン店」としましょう。黒川パン店の商品の特徴は見た目です。「虹色さんかく食パン」と名付けられ、食パンにもかかわらず三角形で、色使いも派手なため写真に撮るとSNS映えしますが、味は普通です。

もう一方を「星野パン店」とします。こちらの主力商品「星野の食パン」は見た目は普通ですが、食べてみると劇的においしいのが特徴です。

これら2つのパン店が取るべき施策は何でしょうか。黒川パン店は商品そのものの持つ便益が弱いため、食べた顧客から味に特徴がないと思われればリピート購入は見込みにくいです。

もし、デジタルマーケティングなどに広告費を投じた場合、一時的な売り上げ増加にはつながるかもしれませんが、継続購入にはつながらず、焼き畑農業的に広告費を投じ続けて顧客を獲得し続けることになりかねません。

まず商品の味を追求する、あるいは三角形という特徴を生かしてサンドイッチにすると食べやすいなど独自の便益を生み出すことに投資すべきでしょう。

一方、星野パン店は商品を識別するための特徴がなく、顧客の記憶に残りづらいのが弱みです。ですが、商品の持つ便益は高いため、ブランディング活動に投資をすることで、成長につながる可能性があります。

例えば、「二度と合えない“流れ星”食パン」と名付け、パッケージに流れ星を入れて、顧客が他社製品と区別しやすくする。さらに、商品の製造ノウハウをマニュアル化し、多店舗展開をして、顧客との接点を拡大するといった具合です。

このように強く顧客に支持される便益を持った商品をつくり、その価値をより多くの顧客に伝えるための活動に投資するという順番で物事を考える必要があります。

商品・サービスの持つ本質的な便益と独自性を新規顧客に実際に体験してもらい、高い価値評価をいただき、忘れないように覚えていただく。それが、ブランディングの主目的です。

もし、新商品であれば、顧客の24時間365日の生活のうち、どの部分で便益を提供するのかを考えます。これだけ商品・サービスの数がある時代ですから、そこには必ず代替品があります。

つまり、自社の商品・サービスを購入につなげるには競合から代替(リプレイス)する必要があります。代替を狙い、商品・サービスを訴求する上で気を付けなければならないのは、「独自性」を打ち出すときのコミュニケーションです。

独自性を考える上で注意すべき「差別化」の誤解

自社の商品・サービスの独自性を考える上で、決して「比較級」になってはいけません。これが「差別化」という言葉の誤解になっています。

差別化と聞くと、多くの人が「より早い」「さらに軽い」といった比較級を思い浮かべがちですが、それでは人は商品・サービスを選びにくい。「さらにキレがある」とか「自社ブランド史上最高」などをうたうコミュニケーションは数多くありますが、同じ便益での比較だと、顧客はその便益を知覚しにくいからです。

物が足りていない時代では「歯磨き粉」を作っただけで、そもそも存在しなかった便益を生み出したため、365日なくてはならないものになりました。

ですが、現在のように様々な「歯磨き粉」がある中で「さらに虫歯予防につながる」と伝えたところで、目新しさはありません。製品テストでは差が出ても、実際の購入者には便益が伝わりにくいためブランドスイッチは起こりにくいです。

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《西口一希》

ブランディングの誤解