
BtoBも根本的なブランディングの構造は同じ
次に少し視点を変えて、BtoB事業の中小企業のブランディングを考えてみます。
結論から言えば、BtoBのブランディングも、これまで紹介してきた事例と同様、価値を見いだす顧客を特定して、赤字ニッチから黒字ニッチを目指すという構造は全く同じです。
顧客が自社の商品・サービスにどのような便益や独自性に価値を見いだしているのかを特定し、その価値を求める顧客を特定分類する。その顧客に対して、絞り込んで営業を行い、新規顧客を開拓する。その際に、記憶に残りやすいような社名やロゴを付けるブランディングによって、想起率の最大化を心掛けます。
配管メーカーが考えた「自社の最終顧客の利益とは?」
筆者が関わった独立系素材メーカーの事例を紹介します。同社はビルやマンションに使われる配管の製造販売をしていました。 一般的に配管は鋼管や銅管が中心。ですが、その企業は新しい素材で、軽量かつ加工しやすい配管を開発し、建築の孫請けや下請け企業に販売していました。
主な便益は、「軽量で扱いやすく工事の負担が少なく、現場の作業担当者の負担も軽減できること」でした。しかし価格が高いことから、期待したほどは売れていないという課題を抱えていました。
配管は、施主となるデベロッパーが担当しているビルやマンションなどの建築に使われます。孫請けから始まる長いバリューチェーンの最終的な顧客は、ビルやマンションの購入者です。
このバリューチェーンにおける最終顧客がそれぞれ求める便益と目的を読み解けば、重要な最終便益は、その建築物の所有者や購入者の満足度になります。では、その最終購入者は、何に潜在的な便益を見いだしているのでしょうか。
ビルやマンションは何十年もすれば劣化し、修繕費用が発生し、転売の際の価値も大きく変わります。建築物に何らかのトラブルが出れば、その価値は大きく下がります。
支援した企業が孫請けに提供している新素材の配管は、鋼や銅に比べて腐食しにくい素材だという特長がありました。そのため、修繕やトラブルによる、ビルやマンション自体の価値毀損の可能性が低いことを便益として提案できることに気付いたのです。
以降、従来の軽量で扱いやすく負担が少ない便益で孫請け会社に配管を販売する一方で、「腐食しにくいため長期の経年劣化に強く、建築物の価値を損なわない」という便益と独自性で新たな顧客を開拓し、事業を拡大しています。
この事例は、自社の商品・サービスが持つ潜在的な独自便益に気付くことで、それを自社の特徴として押し出すブランディングで、数ある配管素材の競争の中で記憶化、想起率の強化も行っているのです。
ブランディングは“アート”ではない
最後に、BtoB分野の関係者でなくても参考にできるリポートとして、経済産業省が発表しているグローバルニッチトップを紹介します。
経済産業省は、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部素材等の事業を有する優良な企業を、「グローバルニッチトップ企業」として選定。認定と表彰を通じ、対象企業の知名度向上や海外展開を支援するとともに、新たにグローバルニッチトップを目指す企業における経営上の羅針盤として提供しています。
この資料では100社の事業内容とビジネスモデルを分かりやすく解説しており、BtoB関係者ではなくても参考になるので、一読をお勧めします。
ここまで、中小企業のブランディングに関して、大手企業やマスブランドとの違いを概念図と具体的な事例で解説しました。
ブランディングは決して、難しく、アート性が高く、高尚なものではありません。顧客と商品・サービスを結び付け、価値を最大化するための手段であることを理解していただけたかと思います。
ここまでお読みいただいた読者の皆さんには、この中小企業の視点と概念図を見ながら、再度、冒頭からブランディングの罠、誤解、本質に関して復習していただければ幸いです。
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