
好感度や信頼度で商品・サービスを選ぶ人は少数
ここまで、世界的なブランドである「アップル」などを例に、「ブランディングによって物が売れる、業績が上がる」という大きな誤解について解説しました。では、顧客は何を基に商品を購入しているのでしょうか。
答えは商品・サービスの持つ具体的な「便益」と「独自性」です。便益は言い換えれば、「買う理由」です。多くの商品・サービスは、″ブランディング″と呼ばれる表面的なデザインや広告表現だけでは、購入してもらえる要因にはなりません。ブランディングを検討する前に、顧客が「買う理由」が何なのかを明確にすべきです。
好感度、信頼度、親近感が高まったから商品・サービスを買うという人は少数です。商品・サービスの具体的な便益と独自性に顧客が価値を感じて、実際の使用においてその価値を再評価するから、好感度や信頼度が高まります。因果関係の理解を誤っています。

売上向上と好感度向上のメカニズム
実際に「ブランド」として確立できる場合、まず上がっていくのは顧客の「購入頻度」と「継続購入率」です。継続購入率が高まると、顧客の「平均購入単価」も上がります。
そして、多くの競合との競争を乗りこえて購入の可能性を高める上で重要になるのが「独自性」です。独自性は言い換えれば「他の商品・サービスを買わない理由」です。商品・サービスの持つ価値が、強い便益と競合商品に代替不能な強い独自性に基づくものであれば、顧客は迷わず同じ商品・サービスを買い続けます。
顧客、もしくは顧客にとって大切な人に対する明確な便益と独自性を知覚して、初めて顧客は商品・サービスに対する価値を見いだして購入対象として認識します。
そして購入を検討し、その便益と独自性、すなわち「価値」を確認すれば、購入意思を固めて、その価値に見合う価格で購入に至ります。この時点で、自分にとっていい選択肢だと感じるので、ブランドに対する好感度は結果として上昇します。
そして購入後に、使用して、期待通りの価値を実感すれば、好感度はより上がります。加えて、何らかの付加価値を感じれば、一層好感度は高まります。
さらに、その商品・サービスに強い独自性があり、他の商品・サービスでは代替不能だと認識されれば、その顧客は同じ商品・サービスを継続的に購入します。
これらの指標の向上により、継続的に商品・サービスを利用することで、それに応じて好感度、信頼度、親近感といった指標が結果的に高まっていきます。
「究極にブランディングされた状態」とは
「究極にブランディングされた状態」とは商品・サービスの購入・利用が習慣化され、顧客の生活に欠かせないものになり、意識させずとも手に取ってしまう、使ってしまう状態を指します。
その商品でしか味わえない「味」や「健康への効用」など、強い便益とその商品にしかない独自性があれば、顧客は自然とそれを思い出して、それ以外の選択肢を考えることもなく、誰に言われずとも同じ商品・サービスを選び続けてくれます。
商品・サービスが生活の一部になるということは、その顧客にとって代替する商品・サービスが存在せず、購入している商品でしか得られない便益と独自性を感じている状態です。それが「究極にブランディングされた状態」です。
商品・サービスの価値を伝え、素晴らしい便益と独自性と商品との関係を忘れられないようにし、顧客の生活の中で習慣化させて、固定客を増やしていく活動。これこそが「ブランディング」です。
アップルのスマートフォン「iPhone」を例に取ると、iPhoneの登場時の広告は決して洗練されていたとは言い難いです。「YouTube」で検索すれば、閲覧できます。言わずもがな、iPhone成功の最大要因は、プロダクトそのものです。
アップルのCEO (最高経営責任者)だったスティーブ・ジョブズ氏は発表時に「iPodに携帯電話機能がついた」と、紹介しました。iPhoneが進化する過程で、アプリの配信サービスが開発され、第三者も巻き込み多様な利便性を提供したことで、高い便益と強烈な独自性が磨かれていき、パソコンを超えて普及しました。
一方で、機能的な便益が弱く消えていった、「Apple Ⅲ」「Lisa」「Macintosh TV」「Newton」「Power Mac G4 Cube 」といったアップル製品をご存じでしょうか。
全てを知っている方は少ないと思います。なぜなら、広く認知されることもなく、消えたからです。アップルの歴史を見ても、便益や独自性が弱かった商品は短期で消えています。

「鼻セレブ」の名称は、便益が伴うから有効
一方で、売れた商品・サービスは人々の記憶に残り、多くの人に「ブランド」の成功として語られます。成功に行き着くまでの歴史や試行錯誤を知らない第三者の後解釈によって、原因と結果の履き違えが拡散し、誤解が広がるのです。
ブランドそのものに好き嫌いは感じなくとも、購入される商品というのは、顧客が商品の持つ便益と独自性を強く感じているからです。例えば、私は花粉症なので、花粉症の季節には王子ネピアのティッシュ「鼻セレブ」というやわらかいティッシュをよく買います。
これはブランディングとして先進的なイメージの広告を見たから買っているのではありません。商品としての機能的な便益、すなわち圧倒的なやわらかさをネーミングが伝え、実際に使用して実感しているから選び続けているのです。実質的な機能便益に加えて、「すごくやわらかいティッシュである」と識別しやすくするネーミングがブランディングです。

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