
ローソンのPBに見る、リブランディングの観点
他社と区別できると、集客、販促、PRといったマーケティング全域において優位性を保つことができます。「このカテゴリーなら、このブランド」といったイメージを定着できれば、顧客から選ばれやすくなるため、市場競争力が高まります。
ここを見誤ると無駄な投資が増えます。ローソンのPB (プライベートブランド)のデザインを巡る騒動は覚えていらっしゃるでしょうか。同社は20年春にPBのパッケージデザインを全面刷新しました。
ベージュを基調としたパッケージに油彩タッチの商品イラストを載せ、ローマ字で商品名を記載した、まるでシンプルな雑貨のようなデザインに仕上げました。
お気に入りの食器や雑貨とともに並んでいても違和感のないようなデザインを採用することで、価格だけで選ばれる従来のPBから、「ローソンのPBだから」を理由に選んでもらえるようなPBへと生まれ変わることを目指した刷新でした。
意欲的なデザイン刷新でしたが、ローソンの意図に反して、顧客からはネットを中心に「商品が分かりにくい」といった批判が相次ぎました。
例えば、納豆は「NATTO」、豆腐は「TOFU」といったローマ字の表記は顧客視点では見慣れないため、ぱっと見で何の商品か分かりにくい。さらに、商品カテゴリーを問わずに同一フォーマットを採用していたため、統一感はありましたが、かえって区別のしづらさに拍車をかけました。
ローソンは批判を受け、PBのリブランディングから2~3カ月後に、約700品目の全パッケージの再改修を決断。PBのパッケージの再改修にさらなるコストをかけることになりました。

「パンパース」が売れなかった理由
過去にはやったCI (コーポレート・アイデンテイテイー)も同様の試みです。かっこいい企業名に変更すれば、ブランドカが高まり、売れるのではないかという発想で、1990年代にはやりました。ですが、多くの企業が失敗しました。失敗したとは自ら公言せずとも、CIが財務結果に明確に貢献したケースはありません。
長らく、様々な企業のマーケティング支援をさせていただきましたが、企業規模が拡大する中で、より事業成長を加速させるためにブランディングをしたいという相談を受けることは多いです。
例えば、有名なタレントを広告などに起用したり、企業ロゴを変えるなどクリエイティブを先進的にしたりすれば、ビジネスが成長するのではないかと期待されていますが、たいていはうまくいきません。ロゴなどをむやみに変えると、顧客がブランドを識別できなくなるからです。
過去にP&Gが韓国の企業を買収して、同社が保有する紙おむつブランドを突然「パンパース」に変更したところ、売り上げが激減しました。
ブランドは識別子であり、顧客はその識別子を手掛かりとして求める便益や独自性を持つ商品を買っています。その識別子を失ったことで、選べなくなってしまったわけです。そこで慌てて、パッケージに記載するパンパースのブランド名を小さくして、元のブランドを打ち出しました。
「ブランドは資産」が意味すること
「ブランドは資産である」と言う人は多くいます。それは事実だとは思いますが、ブランディング活動自体は、資産づくりを目的にすべきではありません。ブランドとは顧客が商品に持つ便益や独自性の記憶であり、その便益や独自性の体験を想起しやすく識別しやすくするためのものです。
別に好きではないけど、とりあえず買われる商品があるとします。実は、そうした状態であればブランディングされていると言えるのです。逆に、すごく情緒的で好感度は高いのに、購入されない商品があったとすれば、それはブランディングされていると言えるでしょうか。その商品を「ブランド」と呼んだとしても、ビジネス的には意味はありません。
ロゴやパッケージが特殊で識別しやすくて、便益と独自性と一緒に記憶に残ることでブランド名やロゴを見ると、つい買ってしまう。それが、結果として顧客の認識に深く残る資産となるのです。
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