2-5-15:ブランディングの第1の目的:想起率を高める

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
ブランディングの主目的は想起率の向上にあり、記憶と識別を強化することで顧客の継続や差別化、コスト削減に効果があります。
2-5-15:ブランディングの第1の目的:想起率を高める
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3つの目的で目標を定めて実行に移す

ここまで、ブランディングの誤解に関して具体的な事例を交えながら解説してきました。本章ではそれを踏まえ、実務上で有効なブランディングの目的を3つに整理して解説します。スマートフォンが普及し、デジタルメディアが主流となった現代でも、この大きな3つの目的は変わらないと考えています。

1つめは「プロダクト(商品・サービス)の記憶化と想起性の確立」です。本シリーズ序盤でも解説しましたが、「ブランド」とは、商品・サービスを他の競合と区別し、顧客に覚えやすく、想起しやすい特徴を提供する識別子です。

例えば、仕事の合間に休憩がてらコーヒーを飲みたいと思ったときに何を思い浮かべるか、季節が秋になって、そろそろ温泉に行きたいなと思ったときに何を思い浮かべるか、これが想起です。

ブランディング第1の目的の重要指標は「想起率」

競合商品・ブランドと比較して想起される割合を比率化したのが「想起率」であり、1つめの目的のブランディング施策において最も重要な指標です。

想起性は、そのプロダクトを識別する記憶が、その顧客が価値を見いだす商品・サービスの便益と独自性と直結していなければ意味がありません。単に、知っている、聞いたことがあるだけの名称認知ではなく、購入意思と購入行動につながる価値を生み出す便益と独自性との連想記憶です。

潜在顧客は、コーヒーを飲みたい、温泉に行きたいなどのニーズを感じた際に、そのニーズを満たすための選択肢を考えます。その際、1つめのブランディングの目的が達成されているブランドが真っ先に想起される可能性が高くなり、購入が促進されます。

最近目にしたコーヒーブランドの広告が訴求する便益と独自性が魅力的で、その広告を見た際の記憶が、その特定のブランドの識別記憶として強く残っていれば、このブランドを想起して、積極的に店頭で探して購入する確率が高くなります。当然、広告が魅力的な訴求をしていても、識別記憶とつながっていなければ、思い出せず、購入にはつながりにくいです。

一方、既に購入経験があり、その商品・ブランドの体験や使用体験がある既存顧客は、享受している便益や独自性を強く認識するようになり、「このブランドでよい」という継続的な商品・ブランド選択の動機が発生します。そのため、このブランドの識別記憶を通じて、他の選択肢に移動する動機を抑制し、離反防止につながります。

この識別記憶と想起性の強化により、顧客の初回購入から、継続購入に至る選択プロセスを簡素化し、商品選択の失敗のリスクを減少させることが目的です。同時に、類似品や模倣品からの法的保護も目的に含まれます。これが、ブランディングの最も基本的かつ重要な目的です。

ブランディングがもたらす6つの効果

その結果、ブランディングがもたらす効果は次の6つが期待できます。

  1. 競合からの区別化
    ブランドネームやロゴ・意匠などで、他競合とは区別されて認識されるようになる。

  2. 選択意思決定の単純化・固定化
    顧客の認知が整理されることで、再び同じ物を選ぶようになる。

  3. 顧客のロイヤル化
    商品・サービスの便益と独自性が記憶され、ブランドロイヤルテイー(継続購入、購入頻度、購入単価)が形成される。

  4. 価格優位性の獲得
    同じ品質・スペックの商品について、競合よりも高い価格で販売が可能になる。

  5. 価格競争の回避
    「顧客にとっての価値」を無視した価格競争に参加する必要がなくなる。

  6. プロモーションコストの削減
    1~5の結果、販売促進のコストを低下させられる。

この目的のためのKPI (重要業績評価指標)には、商品・サービス名称の認知率、便益や独自性などのイメージ認知率、次回購入意向(ネクスト・パーチェス・インテンション=NPI)、想起率、購入頻度、継続購入率などが挙げられます。

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《西口一希》

ブランディングの誤解