
「1種類の顧客に“価値を提供”している」という誤解
ひとつのプロダクトの顧客は、実は1種類ではありません。「WHOとWHATの組み合わせ」は、ほとんどの場合、複数が成立しています。しかし、「自社プロダクトの顧客は1種類」だと勘違いしていることが多く起きています。
マーケターの中にも、こうした点を誤解して「うちのプロダクトのポジショニングは○○だから顧客は1種類」と思い込んでいる人が少なくありません。なぜそう思い込んでしまうかというと、第一の理由として、顧客を平均値やマスで捉えていることが挙げられます。その上で、第二の理由として「企業側が『価値』を提供している」と考えているからです。「そもそも自社プロダクトに『価値』があり、ある顧客群に一方的に提供している」というイメージを無意識に抱いているのです。
「WHOとWHATの組み合わせ」は複数存在する
しかし実際には、ひとつのプロダクトにも様々な便益を感じる顧客がいます。あるプロダクトが有する便益と独自性は多くの場合で単一ではなく、そのどれにどのような価値を見いだすかは人によって違うため、顧客層は必ず複数見つかります。つまり、顧客は1種類ではなく、複数のWHOとWHATの組み合わせがあるのです。どのような組み合わせが成り立っているのかを把握し、それぞれの顧客層のボリュームや将来の拡大可能性などを確かめることで、これから優先的に投資すべき組み合わせを検討できます。
例えばファミレスにはファミリー層、シニア層、1人で利用するビジネスパーソンなど多様な顧客が来店しますが、それぞれにWHOとWHATが成立しています。つまり、ファミレスの「WHOとWHAT」は複数あるのです。そのとき、各顧客が感じている便益と独自性は、重なっている点もあれば異なる点もあります。ファミリー層には広い席や一定の騒々しさが便益に、ビジネスパーソンには仕事の合間の時間調整と休憩を兼ねられる点が便益になっています。WHOとWHATの組み合わせを複数見つけ、拡大していくことが事業成長において重要になります。
自社のプロダクトの顧客が1種類しか思い浮かばないなら、具体的に顧客にヒアリングすることで、複数の組み合わせを見つけることができます。顧客に対して「なぜこの製品を買い続けているのか」「なぜこの店に来ているのか」などと訊ねたとき、そのバリエーションが顧客の人数以上になることはありません。例えば100人に聞いた場合、その答えが100パターン以上になることはなく、主たる便益と独自性に絞ってグループ化すれば、売上の大部分は細かく分けても10~20パターン、たいていは5~10パターン程度で成り立っています。その5~10パターンのWHOとWHATの組み合わせを拡大して、ビジネスは伸長していきます。

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