2-1-27:複数のWHO&WHATを最大化していく ー事業ステージ「10→無限大」その①

顧客起点マーケティング WHO WHAT HOWと価値の理解
複数のWHOとWHATを拡大し、顧客を増やしながらリピートを促進することで、事業の成長を10から無限大へと導きます。
2-1-27:複数のWHO&WHATを最大化していく ー事業ステージ「10→無限大」その①
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複数のWHOとWHATを拡大しながら、リピートを促す

0→1の段階では、最初の顧客を見つけます。次に1→10の段階では、最初の顧客と類似の顧客を拡大しながら、複数の異なるWHOとWHATの組み合わせを探ります。こちらも2項目に分けて解説します。

10→無限大の段階では、大規模投資により複数の組み合わせを最大化します。それぞれの組み合わせにおいて、それが成立する=購入や利用が成り立つ顧客の数をできるだけ引き上げます。かつ、リピートを促進し、離反した顧客の復帰も図っていきます。プロダクトにおいて、WHOとWHATの複数の組み合わせを見つけ、それに価値を感じてくれる顧客の規模を拡大していくことが、10から無限大へと向かう道筋になります。

将来的な収益性は、大規模投資に踏み切る手前の、1→10の状況からおよそ評価できます。1→10では、0→1で成立した組み合わせを水平拡大し、顧客の人数を増やして売上を向上させました。この時期に、顧客から高い再評価を得て継続購入が実現し、顧客の離反も少なければ、将来的な収益性の評価が可能になります。

複数のWHOとWHATを確立し、顧客を拡大する

ニュースアプリの「スマートニュース」には、数多くのチャンネルがありますが、これもWHOとWHATの組み合わせを拡大していく施策の一連から生まれました。2017年ごろのスマートニュースには「新聞やテレビ、雑誌などの旬のニュースがすぐに見られる」という便益はありましたが、競合のニュースアプリに押されて、ダウンロードしてくれる顧客の数が伸び悩んでいる状態にありました。

そのような中、顧客の増加にもつながった「ワールドニュースチャンネル」は、あるユーザーが英語学習の一貫としてスマートニュースの英語版を使っていたことがきっかけになりました。インタビューを通して、その便利さを評価していることがわかったため、英語のニュースを毎日英語で読めることを独自性として「ワールドニュースチャンネル」が日本版に導入されました。

「ワールドニュースチャンネル」をはじめ、いくつかのWHOとWHATの組み合わせを加えていったところ、中でも反響が大きかったのは、前述した「クーポンチャンネル」の存在です。「飲食店のお得なクーポン」という便益を加えたところ、高い価値を見いだしてくれる顧客が一気に増えました。

こうした事例は、他にもたくさんあります。例えば、ワークマンはもともと実用性と機能性に優れた低価格の作業服や防寒着で有名でした。その顧客は主に現場作業のプロたちでしたが、ワークマンの実用性や機能性はアウトドア好きな人たちからも注目されていました。その後、ワークマンが積極的に「普段着でも使えるようなファッション性」を取り入れたことによって、アウトドアやスキー、スノーボードなどを好む一般客や女性客が増えていきました。「職人向けの頑丈な作業服」以外のWHOとWHATを見つけて、それを拡大していったのです。

複数の組み合わせの最大化=中長期的な成長の実現

10→無限大の段階では、1→10で成立している複数の組み合わせを、さらに水平拡大します。そのためには、いくつもの方法があります。

例えば、顧客の入手経路の拡大です。販路を広げて、顧客数を引き上げます。同じWHOとWHATの組み合わせが実現するであろう、未販売地域への販路の整備や営業の強化、あるいは小売店舗での販売からECへ、逆にECから小売店舗へという展開などが考えられます。

プロダクト自体の改良や強化も有効です。プロダクトの購入や実際の使用にあたって、より高い価値を見いだしていただける付帯サービスの充実や、関連購入・追加購入をしたくなるような新しいプロダクトの提供なども視野に入ります。これらの策を通して、顧客あたりの購入頻度や購入単価の向上を図ります。

このように、それぞれのWHOとWHATの組み合わせを広げる手段や手法(HOW)の選択肢は無数にありますが、顧客がどのような方で、その顧客が価値を見いだす便益と独自性が何かというWHOとWHATの組み合わせを具体的に理解しておくことで、適切かつ効果的なHOWの選択が可能になります。

また10→無限大の段階では、水平拡大と同時に1→10で見つけた第2、第3、あるいはそれ以外のWHOとWHATの組み合わせの可能性をさらに追求することが、中長期の継続的な成長、そして収益性の拡大を左右します。

ただし、水平拡大の余地は大きく残っていても、投資によって伸びる可能性がある確度の高いWHOとWHATの組み合わせには限りがあるので、同時にプロダクトの便益と独自性を多様に創造していくことも重要です。そうすると、また新たなWHOとWHATの組み合わせが見つかります。それを加えていくことで、顧客の数の規模を増やし、継続的に売上と収益性を拡大していくのです。

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《西口一希》

WHO WHAT HOWと価値の理解