「誰に」「何を」がわからないと打ち手を誤る
マーケティングにおいて最も大事なのは、どんな顧客(WHO)に、どんなプロダクト(WHAT)を提案して「価値」をつくるのかという、WHOとWHATの組み合わせです。マーケティングの4Pのうち、プロダクト以外のプロモーション(メディアや広告、クリエイティブ手法)、プレイス(販売チャネルや販売方法)、プライス(価格決定)をどうするかは、WHOとWHATの組み合わせを実現するための手段や手法(HOW)にすぎません。その手段は時代とともに変わり、廃れてしまうこともあります。 なので、まずやるべきことは、目先の手法に踊らされずにWHOとWHATをしっかり捉えることです。そうすれば、そのWHOとWHATの関係性をより多く実現するための手段や手法、つまりHOWも、おのずと見えてきます。
同じプロダクトでも、誰に届けるかによって、価値を感じていただけるかどうかが変わります。価値を見いださない人たちに商品を紹介しても、広告やPR、販売チャネルなどにかけたコストは無駄になってしまいます。それ以前に、世の中を見渡して価値を見いださない人が大半ならば、そのプロダクトの開発や生産を考え直したほうがいいかもしれません。
そもそも自社のプロダクトをどのような顧客が購入し、そこにどんな価値を見いだしているかを把握していなければ、その人たちに継続していただくための策も、新しい顧客に購入いただくための策も立案できません。つまり「誰に、何を」の関係性がわかっていないと、次にどのように売っていくかの打ち手を誤ったり、非効率な方法をとったりしてしまうのです。
牛乳の「価値」は、人によって違う
人は「価値」を感じるものに対価を払います。では、その「価値」とは何なのでしょうか? 例えば、牛乳メーカーが提供している牛乳を例にして「価値」について考えてみます。
まず、牛乳に価値はあるのでしょうか? その答えは、あるともいえるし、ないともいえます。というのも、牛乳アレルギーの人にしてみれば、牛乳にお金を払う価値を感じることはできないからです。アレルギーのある人に、健康にいいからと牛乳をいくらすすめても買ってもらえませんし、むしろすすめないほうがいいでしょう。一方で、牛乳を継続的に購入し続ける顧客は、何らかの価値を見いだしているから、お金を払い続けているわけです。この顧客はどんな人たちで、どこに価値を見いだしていて、どんな方々なのかを洞察することが重要になります。同じような価値を見いだす人たちに商品を認知してもらい、実際に飲んで「おいしかった」と評価してもらい、継続的に買ってもらうことで、事業が続いていきます。
仮に、ある時期に牛乳が一気に売れたとしても、実際には他のメーカーが研究開発のために大量購入していて、一般の顧客はそれほど買っていなかったのかもしれません。あるいは、ケーキづくりにその牛乳が合うことがわかり、ケーキ屋さんが買ってくれていたのかもしれません。
そうであるなら、一般の顧客向けだけを考えるのではなく、製菓業界にBtoBのビジネスを提案する可能性が見えてきます。つまり、WHOとWHATが変わってきます。このような場合も、WHOとWHATをきちんと検証して展開していけば、そのズレに気づいたときに修正することができます。何よりWHOとWHATの組み合わせが見えていない状態では、HOWは決められません。誰が価値を見いだしているのかがわからなければ、誰に何を訴求したらいいのか、誰に向けて販売促進をしたらいいかもわからないからです。そんな状態で、商品やサービスのよさを伝えるHOWを「TikTokがいいのか、YouTubeがいいのか、いや、やっぱりInstagramか」などと考えていても答えは出てきません。
プロダクトが牛乳ならば、「牛乳を求めてぜひ買いたいと考える人たちが買えるような仕組みや販売チャネルはどんなものか」というHOWを考えればいいのです。ひょっとすると牛乳におけるHOWは、WHOによっては昔ながらの牛乳配達がいいかもしれませんし、近所のスーパーだけでなくコンビニでも提供したほうがいいのかもしれません。この牛乳を求めている人たちが、もっとも目を惹かれるのはどんな媒体かを考えるのです。あるいは、「この牛乳を求めている人たちが毎日飲めるような価格帯はどれくらいか」、また「1人だけで飲むのか」「家族で飲むのか」によって、サイズも検討する必要があります。このように、「4P」(HOW)は、WHOとWHATの組み合わせによってまったく変わってきます。
まだ会員登録されていない方へ
会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です