2-1-26:マクドナルド「朝マック」のWHO&WHAT ー事業ステージ「1→10」その②

顧客起点マーケティング WHO WHAT HOWと価値の理解
マクドナルドの「朝マック」は通勤・通学圏内の顧客に価値を提案し、潜在顧客を見つける重要性を示しています。顧客の再評価が収益性向上の鍵であり、そのための広告戦略も検討されています。
2-1-26:マクドナルド「朝マック」のWHO&WHAT ー事業ステージ「1→10」その②
  • 2-1-26:マクドナルド「朝マック」のWHO&WHAT ー事業ステージ「1→10」その②
  • 2-1-26:マクドナルド「朝マック」のWHO&WHAT ー事業ステージ「1→10」その②

朝、ファストフード店を利用するのは誰か?

続けて「1→ 10」の段階について、マクドナルドの「朝マック」を例に考えてみましょう。

例えば朝10時30分までの「朝マック」を利用しているのはどんな人かといえば、明らかに通勤圏内や通学圏内にマクドナルドの店舗がある人たちです。朝の通勤途中や通学途中に店舗がないところでは、わざわざ食べに行く人は少ないです。朝マックに価値を感じる人は、少なくとも「通勤・通学経路にマクドナルドがある人」ですから、仮に郊外で最寄りにマクドナルドがない地域で朝マックの広告を投じたとしても効果はないでしょう。

このように、同じ価値を感じる人を見つけだすためには、今、価値を感じている人の何が、その価値とひもづいているのかを理解することが重要です。顧客の生活圏や行動様式、価値観、特性、趣味などのうち、どこにその価値が関係しているのか。朝マックの場合なら、「生活圏」「通勤圏」「通学圏」が関係しているといえます。それに価値を感じて買ってくれている顧客はどういうところに住み、どんな生活を送っているのか、そしてどんな価値観を持っているのか。目の前の顧客を深く理解することが、「1 → 10」へスケールアップするための潜在的な顧客の発見につながっていくのです。

そのプロダクトの便益や独自性が何にひもづいているのかを発見したら、同じような生活圏に住む人や似たような行動様式を持つ人などをターゲット層とし、プロダクトを認知してもらうための訴求を行っていきます。

例えば、通勤圏や通学圏にマクドナルドの店舗がある人たちに対して朝マックを提案したい場合は、電車広告やバス広告が有効でしょう。また、通勤・通学時にスマホでよく見られているメディアへの広告投入や、家を出る時間に目にするテレビ番組にCMを投じる手もあります。就職サイトやビジネスニュースのサイトに広告を入れるのもいいかもしれませんし、人気の高いスマホゲームに広告を入れるという手もあります。そして、これらはすべてHOWです。WHOとWHATがわかれば、どういう人が顧客になり得るかが見えてくるため、それを拡大していく方法(HOW)がいろいろ考えられるということです。

初回購入が成立した顧客に「価値の再評価=リピート」を促す

世に生まれるプロダクトのほとんどは、この1→10の段階では売上を費用が上回る赤字状態ですが、0→1で成立したWHOとWHATから多くの潜在的な顧客像を洞察し、顧客数を拡大することで、売上が費用を上回り利益が見込める収益性を確立していく時期ともいえます。

1→10の段階は、顧客の数の増加に注目して一喜一憂しがちですが、最も重要なのは、プロダクトを実際に使用した顧客の「価値の再評価」です。これがプロダクトの単価と購入頻度の向上を生み出し、収益性を左右します。

どんなビジネスにおいても、最大の壁は、プロダクトを初めて使用した時点での価値の再評価であり、2回目の購入につながるかどうかです。2回目から3回目、3回目から4回目への継続率は初回から2回目に比べるとはるかに高くなるので、初回から2回目の購入への継続率がもっとも重要です。

月額制の動画サービスの「価値の再評価」

価値の再評価について、月額制の動画サービスを例に考えてみます。仮に、契約する時点では視聴できるコンテンツが一部しかわからなかったとしたら、契約して実際に使用し始めた時点で「自分の関心に合うコンテンツが多くあるかどうか」という評価がなされます。自分の関心に合うコンテンツが少ないと判断されれば、契約は解除されますし、たくさんあると判断されれば契約は継続されます。つまり、初めての使用の時点で、その契約者の好みに合うコンテンツがどれだけ豊富であるかを的確に伝えることが重要になるのです。

さらに、初回から2回目ほどの壁ではないとしても、価値の再評価は永遠に続きます。3回目、4回目と検討するタイミングで、競合や代替品の出現によっても顧客の判断は大きく左右されます。そのため、顧客が価値を見いだす便益と独自性をずっと磨いていかなければなりません。

ある動画サービスの継続契約者であっても、また別のサービスがその顧客にとって魅力的なコンテンツを投入すれば、契約中サービスの相対的な価値は下がり、契約を解除して別のサービスへ移る可能性が高まります。顧客が価値を感じる便益と独自性は“固定”だと考えてしまうと、こうした顧客の意識変化や、気づいたら離反されているような状況に気づきにくくなります。ですので、初回購入が成立して以降も、便益と独自性を強化・改善し続け、顧客にとっての価値を高め続けることが重要なのです。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

WHO WHAT HOWと価値の理解