プロダクトは、便益と独自性の有無で4つに分けられる
顧客がプロダクトに「便益」と「独自性」の両方を見いだしたとき、「価値」が生まれます。あらゆる事業は、価値が生まれる可能性が高い「顧客(WHO)とプロダクト(WHAT)の組み合わせ」を見つけ、それをより数多く成立させることで伸びていきます。同じプロダクトでも異なる顧客には異なる価値が成立するため、その組み合わせを複数見つけること(=新規顧客層の開拓)、同時にそれらを伸ばしていくこと(=既存顧客層の育成)が事業成長において重要です。
しかし、世の中で売れているプロダクトはすべて便益と独自性を兼ね備え、顧客にとって「価値」が生じているかというと、そうではありません。便益はあるが独自性に欠けるプロダクトや、逆に独自性だけで瞬間的に売れるプロダクトも存在します。あらゆるプロダクトは便益と独自性の有無によって、「価値」「コモディティ」「ギミック」「資源破壊」の4つに分類することができます。
便益と独自性を兼ね備えたものが「価値」、便益はあるが独自性がないものが「コモディティ」、便益がなく独自性があるものが「ギミック」、そして便益も独自性もないものは「資源破壊」です。
コモディティやギミック、まして資源破壊になっていないか
それぞれの象限を見ていきます。まず右下の、独自性がなく便益があるものは、いわゆる「コモディティ」です。マーケティング領域でコモディティとは、代替性がある商品やサービスを指し、市場では競合と同等として扱われます。つまり、差別化されていないプロダクトのことです。すると顧客は安価であったり手軽に買えたりするものを選ぶことが多く、価格競争に陥りがちです。セールなどで一時的に売上を得ても、より安い類似プロダクトが登場すると一気に顧客が離反するケースが少なくありません。このような状態では事業を継続的に成長させることは難しく、疲弊していくので、早期に独自性を確立しなければなりません。
次に左上の、独自性はあるが便益がないものは、人目を引くためだけの「ギミック(仕掛け)」です。例えば、形は星形だが味は普通のポテトチップスを、パッケージやテレビCMで大きく打ち出したとします。派手な展開によって人々が興味を持っても、おいしさという便益がなければ多くの人が購入するとは考えにくく、購入した人も一過性で終わるでしょう。たった一度だけ購入してもらえればよいプロダクトなら、それでもかまわないかもしれませんが、「買う意味がない」といった悪評が立てば新しく購入する人は減っていき、やはり継続的な成長は厳しくなります。
最後に左下の、独自性がなく便益もないものは何でしょうか。それは各種のリソースを無駄遣いしている、ただの「資源破壊」です。開発にかかる時間や費用、コミュニケーションコスト、そのすべてが無駄になってしまっています。
濃厚だが低カロリーのラーメンはどの象限か
一般的にこってりしたラーメンはカロリーが高く、逆にカロリーの低いラーメンは味があっさりしています。そこに、ある店が「味は濃厚でおいしいのにカロリーが半分しかない」というラーメンを打ち出した場合、おいしいという便益に加えて独自性も非常に強いため、新しい「価値」の可能性が生まれます。「こってりしているがカロリーは低いラーメン」に便益と独自性を感じる人が多ければ、このラーメン店は中長期的な売上拡大を見込めるでしょう。
単に味がおいしいというだけでは、他にもおいしいラーメンは数多く存在するため独自性が弱く、価格競争に巻き込まれます。独自性が弱まれば、他の商品と代替可能になり、コモディティになります。
また、いくら「カロリーが通常の半分」という独自性があっても、おいしいという便益がなければ、それはギミックです。一時的に話題になったとしても、顧客はプロダクトを購入するメリットを感じられないため、継続的に売上を伸ばしていくのは難しい状態です。
当然、おいしくもなく、人目を引く特徴もないラーメンには便益も独自性もないため、様々な資源を費やしながら価値につながらない資源破壊になります。
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