
もっとも重視すべきは「継続購入してくださる顧客」
顧客の継続購入を促すためには、「もっとも高い頻度で継続してくれている顧客がこのプロダクトにどんな便益と独自性を見いだしているのか、どういった理由でこのプロダクトの購入や使用を続けているのか」を調べていくことが大切です。
多様な種類の顧客について、シャンプーを例に考えてみましょう。そのシャンプーを毎月のように買ってくれる顧客がいるとします。この方たちは「継続している顧客」といえます。
また、毎月ではないけれど、ときどき買ってくれる「一般的な顧客」もいます。一方、シャンプーを使ってみたけれど、それほど便益がないと感じた、あるいは使っているうちに髪に合わなくなってきたということで「離反していく顧客」もいます。もしくは一度離反してずっと使っていなかったけれど、最近売れていることを聞いて使ってみたら、よかったからまた使い始めた人もいます。この方々は「離反から復帰した顧客」です。さらに、そのシャンプーのことは知っているけれど、買ったことがないという「未購入の顧客」もいます。
このように多様な種類の顧客がいるため、こうした方々がそれぞれどのくらいいるのか、それぞれの顧客がどんな便益と独自性を感じてくれているのかを、N1分析のインタビューなどで深掘りしていきます。このうち、もっとも重視すべきは前述したように「継続している顧客」であり、この人たちが感じている便益と独自性をさらに強化することが重要です。なぜなら、この便益と独自性を感じている人たちは「上位顧客」として、そのシャンプーの売上を支えてくれているからです。
上位顧客の20%が全売上の80%を占める
一般的には、上位顧客の20%が全売上の80%を占めているといわれています。そこまででなくても、売上は必ず上位集中しています。継続している顧客の数を増やしていくことが売上アップにつながるので、そのためには何が必要か、顧客の行動に変化を与えたポイントなどを探りだすのです。
ただし、その顧客も、このままずっと継続してくれるとは限りません。顧客は、他の商品と比べたり常に価値の再評価を行っていたりするので、いつ離反して他のシャンプーにスイッチするかはわからないのです。そのため、一般的な顧客や、離反から復帰した顧客の単価と頻度を上げる施策も必要です。
そこで、一般的な顧客に対しては、毎月買ってくれている顧客とのギャップがどこにあるのか、どうしたらそのギャップを埋められるのかを探ります。離反から復帰した顧客からは、商品購入をやめたきっかけと復帰した理由を聞き、離反した人たちの中でどんな人が復帰しやすいかを検討します。離反する人たちにも、「復帰しやすい人」と「復帰しにくい人」がいるため、その違いはどこにあるのかを探るのです。一方、離反していった顧客からは「何にスイッチしたか、その競合を選んだ理由」を聞きだします。今までとは違う便益と独自性の提案ができるかどうか、再び利用してもらうためにはどんなポイントが必要かを考えていきます。当然、新規の顧客もWHOとWHATの価値関係で増やしていかなければなりません。
マーケティングでやるべきことは、究極的には2つ
顧客の数を増やしていくために、まずは不特定多数のマーケット全体から、最初の顧客を探し出します。潜在顧客から、プロダクトを購入した最初の顧客です。その際には、最初の顧客がどんな便益と独自性に価値を感じているのか、この人はどんな人なのかをきちんと見極める必要があります。
次に、最初の顧客とは異なる便益と独自性を見いだし、価値を感じている顧客を見つけます。さらに、それらの顧客が感じた価値と重なる顧客を探し出し、価値を知ってもらう方法を考え、購入・使用につなげていきます。ここまでが「初回購入」です。
プロダクトの使用後には「そもそも自分が期待していた便益と独自性に見合ったかどうか」、もしくは「期待していた便益と独自性ではないけれども、他の便益と独自性を見いだすことができたかどうか」という「価値の再評価」が起こります。
一度プロダクトを使用したり体験したりした顧客に、再び価値を感じていただけると、「継続購入(リピート)」につながります。そして、継続購入している顧客が見いだす便益と独自性を理解し、「単価・頻度」を上げていくのです。継続すべく離反しないようにするのが理想ですが、中には離反していく人も出てきます。その場合は、どのような便益と独自性であれば、再びプロダクトに価値を見いだしていただけるかを考えていきます。

これがマーケティングの仕事です。新規の顧客の数を拡大していくと同時に、離反を最小化し顧客の継続購入を促すこと。そのための継続的な便益と独自性の提案と価値づくり。これらが、すべてといっても過言ではありません。
このように考えていくと、マーケティングというのは非常にシンプルなことだと理解できるでしょう。なぜ難しいと思われているのかというと、それは「顧客」を軸に考えないからです。「誰に」が曖昧なまま手段や手法から入ろうとすると、マーケティングの樹海に迷い込んでしまいます。それぞれの顧客がどんな便益と独自性を感じているのかを知り、顧客になる可能性のある人とはどんな人か、その人たちに何を伝えたらいいのかを軸に立てていくと、自ずとその手段と手法も見えてくるのです。
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