2-1-28:顧客数と同時に、単価と頻度を上げる ー事業ステージ「10→無限大」その②

顧客起点マーケティング WHO WHAT HOWと価値の理解
事業のスケールアップには顧客数の増加だけでなく、単価と頻度を上げることも重要です。既存顧客のニーズを満たす提案や新たなプロダクトの開発をはじめ、多様な顧客に価値を提案し、事業成長を図ることが基本です。
2-1-28:顧客数と同時に、単価と頻度を上げる ー事業ステージ「10→無限大」その②

スケールアップに限界はない

プロダクトに価値が見いだされ、顧客が0から1人、1人から10人、10人から仮に1000人へと増えていったとき、その1000人がスケールアップの限界かといえば、そうではありません。 既存の顧客と同じように、そのプロダクトに価値を見いだしてくれる潜在的な顧客はまだいるはずで、厳密に数は計り知れません。

潜在的な顧客にとどまっているのは、そのプロダクトを認知していないがゆえに選んでいないという状態に陥っている可能性が高いです。販路を整え、その人に接触するのに適切な場所で、便益と独自性に気づいてもらえる訴求を展開すれば、初回購入を促すことができます。

もう顧客数が伸びない、頭打ちだと思っても、ほとんどの場合で本当に「潜在的な顧客がいない=スケールアップの限界」を迎えているわけではありません。世界中でもっとも有名な飲食店のひとつであるマクドナルドでさえ、顧客になり得る人の全員が、すでに食べたことがあるわけではないでしょう。どんなプロダクトも、潜在的な顧客が1人もいないはずはありません。だからこそ、そのプロダクトに価値を見いだしてくれる顧客は誰なのかを理解することが、すべての起点となるのです。

既存顧客の購入単価と頻度を高める

WHOとWHATの複線化とそれぞれの強化によって、顧客数の規模を最大化していきますが、大規模投資を実行する10→無限大で取るべき方法は、顧客数の増大だけではありません。顧客の購入単価と購入頻度を上げることも、事業の拡大につながっていきます。

製品改良やサービスの充実によって購入・使用の量や頻度を向上させるのが、典型的な方法です。現在、購入されているプロダクトの上位製品やサービスを提案し、購入単価を向上させることをアップセルといいます。

既存顧客の、まだ満たされていないニーズをつかみ、自社が提案しうる別のプロダクトがあれば提案して購入・使用の量や頻度を向上させる方法もあります。顧客が他に価値を見いだす異なるプロダクトが自社になければ、新たに開発して、購入・使用の機会をつくるのもひとつの手です。既存顧客に、そのプロダクトと並行して購入いただけそうな関連プロダクトを勧めて購入単価を引き上げることを、クロスセルといいます。

「夜マック」で実現した売上向上と新規顧客の獲得

例えば、あるファストフード店をいつも朝食で利用している人に、昼にも夜にも買ってもらおうと考えることは、購入頻度や単価を高める取り組みです。実際にマクドナルドでは、17時から「夜マック」という名称で異なるメニュー群を展開し、顧客の購入頻度と単価を上げ、売上を増加させました。その際、夜の時間帯はしっかり食事をとりたいというニーズが強いため、顧客が満足できるように、プラス100円でパティが倍になる肉厚のハンバーガーを提供しました。

仮にマクドナルドを訪れる顧客数に変化がなくても、一人ひとりの購入頻度が上がり、単価が上がることで、掛け算として全体の売上も上がります。購入のシーンが変わることによるニーズの変化も想定し、対応した結果、既存顧客の支持を得られました。

また、朝や昼にはファストフード店には行かないけれど、夜マックなら買ってみたいという顧客がいれば、これまでのプロダクトでは捉えられていなかった顧客と夜マックという組み合わせでWHOとWHATが成立することになります。すると、WHOとWHATの組み合わせがひとつ増え、全体の顧客数が増加し、それぞれの単価と頻度を上げていくことで事業がさらに成長します。

このように、プロダクトで提供できる多様な便益と独自性の組み合わせによって、多様な顧客に価値を感じてもらい、潜在的な顧客を新規顧客として取り込んでいくことができます。同時に、既存顧客の単価と頻度の最大化も行っていきます。0→1、1→10、10→無限大へと、顧客の数の規模および単価と頻度を大きくしていくのが、事業成長の基本となるプロセスです。

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《西口一希》

WHO WHAT HOWと価値の理解