
近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。
ダニエル・ヤンケロビッチ(Daniel Yankelovich、1924年 - 2017年)は、アメリカの社会学者、市場調査員、著述家であり、特に社会の変化と人々の価値観の変化を研究したことで知られています。彼は、世論調査会社ヤンケロビッチ・グループ(Yankelovich Group)を設立し、長年にわたりアメリカ社会の動向を分析してきました。彼の著書『ニュールール(New Rules: Searching for Self-Fulfillment in a World Turned Upside Down)』は、1980年代のアメリカ社会における価値観の変化を捉えた重要な著作として評価されています。
『ニュールール』の中で、ヤンケロビッチは、1970年代から1980年代にかけてのアメリカ社会において、人々の価値観が大きく変化していることを指摘し、従来の「義務」や「犠牲」を重視する価値観から、「自己実現」や「個人的な満足」を重視する価値観へと移行していると分析しました。具体的には、人々は、仕事や家庭生活だけでなく、個人的な成長や精神的な充足を求めるようになり、物を所有することよりも、経験や自己表現を重視する消費行動が現れるようになり、従来の伝統的な家族観や人間関係から、より個人的なつながりや相互的な関係を求めるようになっていると指摘しました。
「社会価値観調査」
ヤンケロビッチは、単なる人口統計や消費行動のデータだけでなく、人々の内面的な価値観や意識の変化を捉えることの重要性を強調しました。彼の研究は、以下の点に特徴付けられます。
価値観の変遷の追跡: 時代とともに人々の価値観がどのように変化していくのかを、長期的な視点で追跡しました。
社会トレンドの分析: 価値観の変化が社会全体のトレンドにどのように影響を与えるのかを分析しました。
定性調査の重視: 定量的なデータだけでなく、インタビューやフォーカスグループなどの定性的な調査を通じて、人々の意識の深層を探りました。
ヤンケロビッチは、人々のライフスタイルが単なる消費行動だけでなく、価値観やライフステージ、社会階層など、様々な要因によって形成される複合的な概念であることを明らかにし、現代のマーケティング、消費者行動研究、社会学などに大きな影響を与えています。
「「社会価値観調査」
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ヤンケロビッチの主な著書
『ニュールール』
『若者は変わった(The New Morality: A Profile of American Youth in the 70's)』
『Coming to Public Judgment: Making Democracy Work in a Complex World』
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