
近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。
フィリップ・コトラー(Philip Kotler、1931年 - )は、「現代マーケティングの父」とも称される、世界的に著名なマーケティング学者です。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の特別教授を務めており、マーケティング分野に多大な貢献をしてきました。彼の著書である『マーケティング・マネジメント (Marketing Management)』は、世界中のビジネススクールで教科書として使用されており、マーケティングのバイブルとも言える存在です。コトラーは、マーケティングを単なる販売活動ではなく、社会的なプロセスとして捉え、顧客のニーズを満たすことによって価値を創造し、交換を促進する活動であると定義しました。彼は、マーケティングの概念を拡張し、非営利組織や社会問題への応用も提唱しています。
「マーケティングミックス」
コトラーは、ジェローム・マッカーシーが提唱した「4P」を自身の著書で広く紹介することでマーケティングミックスの概念を確立しました。マーケティングミックスとは、企業がマーケティング目標を達成するためにコントロール可能な一連のマーケティングツールのことです。その基本系としての4Pは以下の通りです。
製品 (Product): 顧客のニーズを満たすために提供される有形・無形の財やサービス。品質、機能、デザイン、ブランド、パッケージング、サービスなどが含まれます。
価格 (Price): 製品やサービスの対価として顧客が支払う金額。価格設定戦略、割引、支払い条件などが含まれます。
流通 (Place): 製品やサービスを顧客に届けるための経路や手段。流通チャネル、物流、在庫管理、販売拠点などが含まれます。
プロモーション (Promotion): 製品やサービスの情報を顧客に伝え、購買意欲を高めるための活動。広告、販売促進、広報、人的販売、ダイレクトマーケティング、デジタルマーケティングなどが含まれます。
「STP」
コトラーは、効果的なマーケティング戦略を立案するためのフレームワークとして、「STP」を提唱しました。STPは以下の3つの要素から構成され、STPに基づいてマーケティングミックス(MM)である4Pを企画するマーケティングプロセスの基礎を提案しています。
セグメンテーション (Segmentation): 市場を、ニーズや特性が類似した顧客グループ(セグメント)に分割すること。人口統計、地理、行動、心理などの変数を用いて市場を細分化します。
ターゲティング (Targeting): 分割されたセグメントの中から、自社の製品やサービスが最も適しているターゲットセグメントを選択すること。市場規模、成長性、収益性、競合状況などを考慮してターゲットを選定します。
ポジショニング (Positioning): ターゲットセグメントの顧客に対して、自社の製品やサービスが競合他社と比べてどのような独自の価値を提供できるかを明確にすること。顧客の心の中に、自社ブランドの明確なイメージを構築します。

コトラーのマーケティング理論が与えた影響
コトラーのマーケティング理論は、現代マーケティングに多大な影響を与えています。
マーケティングの定義の拡張: マーケティングを単なる販売活動から、顧客価値の創造と交換を促進する活動へと拡張しました。
顧客中心主義の確立: 顧客のニーズを重視する考え方を強調し、現代マーケティングの基本原則としました。
マーケティングプロセスの推進: STP、MM(4P)などのフレームワークを通じて、戦略的にマーケティングを進める重要性を提唱しました。
マーケティングの社会への応用: 非営利組織や社会問題へのマーケティングの応用を提唱し、ソーシャルマーケティングの分野を発展させました。
デジタルマーケティングへの対応: 近年では、デジタル技術の発展に対応したマーケティング戦略の重要性を提唱しています。
主な著書
『マーケティング・マネジメント (Marketing Management)』: マーケティングの包括的な教科書であり、世界中のビジネススクールで広く使用されています。最新の第16版では、アレクサンダー・チェルネフ教授が加わり、消費者行動論や行動経済学の知見も取り入れられています。
『コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略 (Marketing 5.0: Technology for Humanity)』: デジタル技術が進化する現代において、企業がどのようにマーケティング戦略を適応させていくべきかを解説しています。
まだ会員登録されていない方へ
会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です