
近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。
エドワード・バーネイズ(Edward Bernays、1891年 - 1995年)は、第一次世界大戦中、アメリカ政府の広報機関であるCommittee on Public Information(CPI)で活動し、戦後にPRコンサルタントとして独立した「PR(パブリック・リレーションズ)の父」として知られる、広報活動とプロパガンダの専門家です。
彼の著書『プロパガンダ(Propaganda)』(1928年)は、世論操作の技術について論じたもので、賛否両論を巻き起こしながらも、現代のPRや広告、政治戦略に大きな影響を与えています。大衆は非合理的で、群集心理に影響されやすいと捉え、熟練した専門家が心理学(特に叔父フロイトの精神分析)や社会学の知識を用いて、大衆の意見や行動をコントロールできると主張しました。
『プロパガンダ』で示された主な概念
「『プロパガンダ』の主な概念」
|
世論の操作: バーネイズは、世論は偶然に形成されるものではなく、意図的に操作できると主張しました。
「合意のエンジニアリング (Engineering of Consent)」: 専門家が情報操作やシンボル操作を通じて、大衆の合意を形成し、望ましい方向へ導くことを指します。
潜在意識への訴求: フロイトの精神分析理論を応用し、大衆の潜在意識に訴えかけることで、より効果的に影響を与えられるとしました。
第三者機関の利用: 著名人や専門家、団体などを利用することで、情報の信頼性を高め、大衆への影響力を強める手法を提唱しました。
バーネイズの理論と手法は、現代のPR、広告、マーケティング、政治キャンペーンなどに大きな影響を与え、PRの分野を確立した功績で高く評価される一方で、世論操作によって大衆を操るという彼の思想は、倫理的な観点から強い批判も受けています。特に、ナチス・ドイツがプロパガンダを効果的に利用したことなどから、彼の理論は負の側面も強調されるようになりました。
バーネイズの主な著書
『Crystallizing Public Opinion』(1923年): PRの概念を体系的に解説した初期の著作。
『プロパガンダ』(1928年): 世論操作の技術について論じた代表作。
『Public Relations』(1945年): 戦後のPR活動についてまとめた著作。
まだ会員登録されていない方へ
会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です