1-4-23:クリス・アンダーソン

クリス・アンダーソンは、アメリカの著述家、編集者、起業家です。特に、インターネット時代の経済とビジネスモデルの洞察で知られており、『ロングテール』と『フリー』の2冊の著書で広く知られるようになりました。
1-4-23:クリス・アンダーソン
  • 1-4-23:クリス・アンダーソン
  • 1-4-23:クリス・アンダーソン

近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。

クリス・アンダーソン(Chris Anderson、1961年 - )は、イギリス生まれのアメリカ人の著述家、編集者、起業家です。彼は特に、インターネット時代の経済とビジネスモデルに関する洞察で知られており、『ロングテール (The Long Tail)』(2006年) と『フリー —〈無料〉からお金を生み出す新戦略』(2009年) の2冊の著書で広く知られるようになりました。

「ロングテール理論」

ロングテール理論は、アンダーソンが2004年に『Wired』誌の記事で初めて提唱し、その後書籍『ロングテール』で詳しく解説した理論です。この理論は、インターネットとデジタル技術の普及によって、従来の物理的な制約が取り払われ、ニッチな商品やサービスも経済的に成立するようになったことを示しています。従来のビジネスモデルでは、店舗の棚のスペースや在庫管理の制約から、売れ筋商品(ヒット商品)に重点が置かれていました。

しかし、オンラインストアやデジタル配信サービスでは、事実上無限のスペースを持つことができ、多種多様な商品を提供することができます。ロングテール理論では、需要曲線をグラフで表した際に、売れ筋商品が占める「ヘッド(頭)」の部分と、ニッチな商品が連なる「テール(尾)」の部分に注目します。従来のビジネスではヘッドの部分に集中していましたが、インターネット時代ではテールの部分、つまりニッチな商品の総売上が、ヘッドの売上を上回る可能性があると指摘しています。

ロングテール理論のポイント

  • 豊富な品揃え: オンラインストアやデジタル配信サービスは、物理的な制約を受けないため、非常に豊富な品揃えを実現できます。

  • 低コストの流通: インターネットを通じて、低コストで商品を流通させることができます。

  • 検索とレコメンデーション: 検索エンジンやレコメンデーション機能によって、顧客はニッチな商品にも容易にアクセスできます。

  • 需要の集約: 少数の顧客しか必要としないニッチな商品でも、インターネットを通じて世界中の需要を集約することで、十分な売上を上げることができます。

「ロングテール理論のポイント」

  • 豊富な品揃え

  • 低コストの流通

  • 検索とレコメンデーション

  • 需要の集約

ロングテールの例

  • Amazon:書籍だけでなく、CD、DVD、家電製品、食品など、あらゆる商品を販売しており、ニッチな商品の売上も大きな割合を占めています。

  • Netflix:ストリーミング配信サービスを通じて、過去の映画やテレビ番組、ニッチなジャンルの作品など、豊富なコンテンツを提供しています。

    「フリーミアムモデル」

フリーミアムモデルは、アンダーソンが著書『FREE』で提唱したビジネスモデルです。このモデルは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、追加機能や高度な機能、または広告非表示などの特典を有料で提供することで収益を上げるというものです。「フリーミアム」は、「フリー (Free)」と「プレミアム (Premium)」を組み合わせた造語です。無料で提供することで多くのユーザーを獲得し、その一部を有料ユーザーに転換することで収益を上げるという仕組みです。

フリーミアムモデルのポイント

  • 無料提供: 基本的なサービスや製品を無料で提供することで、多くのユーザーを獲得します。

  • 有料オプション: 追加機能や高度な機能、または広告非表示などの特典を有料で提供します。

  • コンバージョン: 無料ユーザーの一部を有料ユーザーに転換することが重要です。

  • ネットワーク効果: ユーザー数が増えることでサービスや製品の価値が高まる場合、フリーミアムモデルは特に有効です。

「フリーミアムモデルのポイント」

  • 無料提供

  • 有料オプション

  • コンバージョン

  • ネットワーク効果

フリーミアムモデルの例

  • オンラインゲーム:基本的なゲームプレイは無料で提供されますが、ゲーム内アイテムや追加コンテンツは有料で購入できます。

  • Spotify: 基本的な音楽ストリーミングサービスは無料で提供されますが、広告なし再生、オフライン再生、高音質再生などの機能は有料プランで提供されます。

ロングテールとフリーミアムの関係

ロングテール理論は、フリーミアムモデルと密接に関連しています。フリーミアムモデルによって多くのユーザーを獲得し、ロングテールにあるニッチな需要に対応することで、収益の最大化を図ることができます。例えば、オンラインゲームでは、無料ユーザーがゲーム内で使用するアイテムを有料で販売することで、ロングテールにある需要を収益化しています。

クリス・アンダーソンの主な著書

アンダーソンは、『Wired』誌の編集長を長年務めた後、ドローンメーカーの3D Roboticsを創業し、CEOを務めました。また、TEDカンファレンスのキュレーターとしても知られています。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

マーケティングに影響を与えた41人と理論