1-4-11:エベレット・M・ロジャース

エベレット・M・ロジャースは「イノベーションの普及理論」を提唱し、イノベーションの採用プロセスを5段階に分け、採用者を5つのカテゴリに分類しました。この理論は多くの分野に影響を与えています。
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近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。

エベレット・M・ロジャース(Everett M. Rogers、1931年 - 2004年)は、アメリカの社会学者であり、コミュニケーション学、農村社会学、そして特に「イノベーションの普及」に関する研究で広く知られています。彼の最も重要な業績は、1962年に出版された著書『イノベーションの普及(Diffusion of Innovations)』で提唱された「イノベーター理論」です。この理論は、新しいアイデア、製品、技術(イノベーション)が、どのように社会に広まっていくのかを説明するもので、マーケティング、社会学、情報科学、公衆衛生など、非常に幅広い分野に影響を与えています。

「イノベーター理論(イノベーション普及理論)」

イノベーター理論(またはイノベーション普及理論)は、新しいアイデアや製品、技術が、特定の社会システムの中で、時間を通じてどのように受け入れられ、広まっていくのかを説明する理論です。ロジャースは、この普及のプロセスを段階的に捉え、また、イノベーションを受け入れる人々の特性に基づいて分類しました。

ロジャースは、個人がイノベーションを採用するまでのプロセスを以下の5つの段階に分けました。

  1. 知識(Knowledge): 個人がイノベーションの存在を知る段階。情報に触れ、そのイノベーションについて認識します。

  2. 説得(Persuasion): イノベーションに対して好意的または否定的な態度を形成する段階。イノベーションの利点や欠点について情報を集め、評価します。

  3. 意思決定(Decision): イノベーションを採用するか拒否するかを決定する段階。試用したり、他の人の意見を聞いたりしながら、最終的な判断を下します。

  4. 実行(Implementation): イノベーションを使用し始める段階。実際に使用することで、イノベーションの有用性を確認します。

  5. 確認(Confirmation): 採用の決定を再評価する段階。使用後の経験に基づいて、採用を継続するかどうかを判断します。

採用者カテゴリー

ロジャースは、イノベーションの採用時期に基づいて、人々を以下の5つのカテゴリーに分類しました。この分類は、普及曲線を視覚的に表現する際にも用いられます。

  1. イノベーター(Innovators): 新しいもの好きで、リスクを恐れない冒険家タイプ。新しいアイデアや技術をいち早く試したがります。情報収集能力が高く、外部の情報源にアクセスする傾向があります。全体の約2.5%を占めます。

  2. アーリーアダプター(Early Adopters): オピニオンリーダーであり、情報通で、他の人々に影響を与える力を持っています。新しい情報に敏感で、比較的早い段階でイノベーションを採用します。社会的地位が高く、周囲からの信頼も厚いです。全体の約13.5%を占めます。

  3. アーリーマジョリティ(Early Majority): 慎重派で、他の人が採用するのを見てから採用するかどうかを判断します。平均的な人よりもやや早くイノベーションを採用します。情報収集は行いますが、リスクを避ける傾向があります。全体の約34%を占めます。

  4. レイトマジョリティ(Late Majority): 保守的で、周りのほとんどの人が採用してからようやく採用を検討します。変化を嫌い、新しいものに対して懐疑的な傾向があります。社会的・経済的な理由で採用が遅れることもあります。全体の約34%を占めます。

  5. ラガード(Laggards): 最も保守的で、伝統を重んじ、変化を極端に嫌います。最後にイノベーションを採用するか、全く採用しない場合もあります。過去の経験や伝統に固執する傾向があります。全体の約16%を占めます。

イノベーションの特性

ロジャースは、イノベーション自体の特性も普及速度に影響を与える要因として分析しました。以下の5つの特性が高いほど、イノベーションはより早く普及する傾向があります。

  1. 相対的優位性(Relative Advantage): 既存のものと比較して、どの程度優れているか。経済的、社会的、機能的な利点などが含まれます。

  2. 適合性(Compatibility): 既存の価値観、経験、ニーズとどの程度一致しているか。文化的な適合性も重要です。

  3. 複雑性(Complexity): 理解したり使用したりするのがどの程度難しいか。複雑なイノベーションは普及に時間がかかります。

  4. 試用可能性(Trialability): 試用できるかどうか。試用できることで、リスクを軽減し、採用を促進します。

  5. 観察可能性(Observability): 効果がどの程度目に見えるか。効果が明確に観察できるほど、普及しやすくなります。

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《西口一希》

マーケティングに影響を与えた41人と理論