
近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。
レジス・マッケンナ(Regis McKenna、1939年 - )は、シリコンバレーで活躍した著名なマーケティングコンサルタントであり、「ハイテクマーケティングの父」とも称されています。アップルやインテルなどの黎明期から彼らの成長を支え、革新的なマーケティング戦略で成功を収めました。彼の著書の中で特に重要なのは、『Total Access: Giving Customers What They Want in an Anytime, Anywhere World』です。この著書で示された彼の考え方は、現代のデジタルマーケティング、特に「リアルタイム・マーケティング」の先駆けとも言えるものです。
「リアルタイム・マーケティング」
リアルタイム・マーケティングとは、顧客とのインタラクションやイベントが発生した瞬間に、即座に対応するマーケティング手法です。従来の計画に基づいたマーケティングとは異なり、変化する状況や顧客のニーズに迅速に適応し、タイムリーな情報提供やコミュニケーションを行うことを重視します。マッケンナは、「トータルアクセス」という概念を通して、顧客がいつでもどこでも企業にアクセスでき、必要な情報やサービスを得られる環境の重要性を強調しました。これは、現代のデジタル環境における顧客行動を予見していたと言えます。
「トータルアクセス」の概念は、以下の要素を含んでいます。
顧客中心主義: 顧客のニーズと期待を深く理解し、顧客視点からあらゆる活動を構築すること。
双方向コミュニケーション: 企業と顧客の間で継続的な対話が行われること。一方的な情報発信ではなく、顧客からのフィードバックを受け入れ、反映することが重要。
テクノロジーの活用: インターネット、モバイル、ソーシャルメディアなどのテクノロジーを活用し、顧客との接点を増やし、リアルタイムなコミュニケーションを実現すること。
統合された情報システム: 顧客に関するあらゆる情報を統合的に管理し、顧客対応に活用すること。顧客データに基づいたパーソナライズされた体験を提供することが重要。
「トータルアクセス」
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リアルタイム・マーケティングの具体的な例
ソーシャルメディアでの対応: 顧客からのコメントや質問に即座に返信したり、トレンドに合わせたコンテンツを配信したりすること。
イベントに合わせたキャンペーン: スポーツイベントや季節イベントなどに合わせて、タイムリーなキャンペーンを展開すること。
ウェブサイトの最適化: 顧客の行動データに基づいて、ウェブサイトの内容や表示を最適化すること。
パーソナライズされたメール配信: 顧客の属性や過去の購買履歴に基づいて、個別に最適化されたメールを配信すること。
チャットボットの活用: 顧客からの問い合わせに24時間体制で対応すること。
マッケンナの提唱は、現代のマーケティングに以下のような影響を与えています。
顧客関係管理(CRM)の重要性の高まり: 顧客データを統合的に管理し、顧客との関係を深めることが重要視されるようになりました。
デジタルマーケティングの発展: インターネットやモバイルなどのテクノロジーを活用したマーケティング手法が主流となりました。
コンテンツマーケティングの重要性の高まり: 顧客にとって価値のある情報を提供することで、顧客とのエンゲージメントを高めることが重要視されるようになりました。
ソーシャルメディアマーケティングの普及: ソーシャルメディアを活用した顧客とのコミュニケーションが一般的になりました。
マッケンナのその他の著書と活動
マッケンナは、『Total Access』以外にも、『ザ・マーケティング (Relationship Marketing)』などの著書を執筆しています。
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