1-4-21：ケビン・レーン・ケラー

近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。

ケビン・レーン・ケラー（Kevin Lane Keller、1956年 - ）は、アメリカのマーケティング学者であり、ブランド管理の分野で世界的に著名な権威です。ダートマス大学のタックスクール・オブ・ビジネスでマーケティング教授を務めています。彼の最も有名な業績は、著書『戦略的ブランド・マネジメント (Strategic Brand Management)』で提唱された「顧客ベースのブランド・エクイティ (CBBE) モデル」です。このモデルは、ブランド・エクイティを顧客の視点から捉え、ブランド構築のための重要なフレームワークとして広く活用されています。

「顧客ベースのブランド・エクイティ (CBBE) モデル」

CBBEモデルは、ブランド・エクイティを「顧客がブランドについて知っていること、感じていること、経験したことの累積的な影響」と定義し、強力なブランドは顧客の頭の中にどのように構築されるのかを段階的に説明するモデルです。このモデルは、ピラミッド型の構造で表され、「ブランド・レゾナンス・ピラミッド」とも呼ばれます。CBBEモデルは、ブランド構築のプロセスをピラミッド型の階層構造で表したもので、ピラミッドは下から上に向かって、以下の4つの段階で構成され、ブランドと顧客の関係性の深さを表しており、上位の段階ほどより強固な関係が築けている状態と言えます。

セイリエンス（顕現性、Salience）: ブランドの認知度、想起のしやすさ。顧客が特定のニーズや状況でブランドを思い出すことができるかどうかが重要です。
1. ブランド識別（Brand Identity）: 顧客がブランドを認識し、識別できること。
2. ブランド想起（Brand Awareness）: 特定の状況でブランドを思い出すことができること。
パフォーマンス（Performance）: 製品・サービスの機能的価値。顧客のニーズを満たす品質、信頼性、耐久性、価格などが含まれます。
1. 主要特性と特徴（Primary Characteristics & Features）: 製品・サービスの基本的な機能や特徴。
2. 製品の信頼性、耐久性、サービス性（Product Reliability, Durability & Serviceability）: 製品・サービスの品質、信頼性、耐久性、アフターサービス。
3. サービスの効率性、共感性、効果性（Service Effectiveness, Empathy & Efficiency）: サービスの質、顧客への共感、効率性。
4. 価格（Price）: 製品・サービスの価格。
イメージ（Imagery）: ブランドが持つイメージ、連想。顧客がブランドに対して抱く感情的な印象やライフスタイルとの関連性などが含まれます。
1. ユーザープロファイル（User Profile）: ブランドの典型的なユーザー像。
2. 購買および使用状況（Purchase & Usage Situations）: 製品・サービスが購入・使用される状況。
3. 個性と価値観（Personality & Values）: ブランドが持つ個性や価値観。
4. 歴史、遺産、経験（History, Heritage & Experiences）: ブランドの歴史や背景、顧客との過去の経験。
レゾナンス（共鳴、Resonance）: ブランドと顧客の間の最も強い関係。顧客がブランドに対して深い愛着や忠誠心を持ち、積極的に関与する状態です。
1. ロイヤルティ（Loyalty）: ブランドへの忠誠心、繰り返し購入。
2. コミュニティ（Community）: ブランドを中心としたコミュニティの形成。
3. エンゲージメント（Engagement）: ブランドへの積極的な関与（口コミ、SNSでの共有など）。