1-4-18:ロバート・チャルディーニ

ロバート・チャルディーニは、影響力の6原則を提唱し、マーケティングやコミュニケーションに応用されています。彼の研究は、意思決定への無意識の影響を理解し、より効果的に活用する手助けとなります。
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近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。

ロバート・チャルディーニ(Robert Cialdini、1945年 - )は、アメリカの社会心理学者であり、アリゾナ州立大学の名誉教授です。彼は、人が承諾や同意に至る心理的なメカニズムを研究し、その成果をまとめた著書『影響力の武器—なぜ、人は動かされるのか (Influence: The Psychology of Persuasion)』は、世界中で広く読まれています。この著書で提唱された「影響力の6原則」は、マーケティング、セールス、交渉、広告など、様々な分野で応用されています。

「影響力の6原則」

チャルディーニは、人が承諾に至る要因を調査する中で、以下の6つの原則を特定しました。

  1. 返報性(Reciprocity): 人は他人から何か恩恵を受けると、お返しをしたいという気持ちになるという原則です。これは、贈り物、親切な行為、情報提供など、様々な形で行われます。マーケティングにおいては、無料サンプルや試供品の提供、顧客への特別なサービスなどがこの原則を活用した例と言えます。

  2. コミットメントと一貫性(Commitment and Consistency): 人は一度公に表明したことや、自ら選択した行動に対して、一貫性を保とうとする傾向があります。小さな要求から始めて、徐々に大きな要求を受け入れさせる「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックや、最初に非常に魅力的な条件を提示しておき、後で徐々に条件を悪くしていく「ローボール」というテクニックはこの原則に基づいています。

  3. 社会的証明(Social Proof): 人は、他の人々がどのように行動しているかを見て、自分の行動を決定する傾向があります。特に、状況が不確かな場合や、自分と似た人々がどのように行動しているかに注目します。「ベストセラー」「お客様の声」「行列のできている店」などは、この原則を活用した例です。

  4. 好意(Liking): 人は、自分が好意を持っている人からの影響を受けやすいという原則です。容姿が良い、性格が良い、共通点が多いなど、好意を抱く理由は様々です。マーケティングにおいては、有名人を起用した広告や、販売員と顧客との良好な関係構築などがこの原則を活用した例です。

  5. 権威(Authority): 人は、権威のある人物や専門家の意見に影響を受けやすいという原則です。医者、弁護士、専門家などの肩書きや服装、実績などは、権威を示す要素となります。広告においては、専門家や著名人の推薦文などがこの原則を活用した例です。

  6. 希少性(Scarcity): 手に入りにくいものほど価値があると感じるという原則です。「限定品」「残りわずか」「期間限定」などの言葉は、この原則を活用して購入意欲を高める効果があります。 

「影響力の6原則」

  • 1)返報性(Reciprocity)

  • 2)コミットメントと一貫性(Commitment and Consistency)

  • 3)社会的証明(Social Proof)

  • 4)好意(Liking)

  • 5)権威(Authority)

  • 6)希少性(Scarcity)

情報過多の現代において、私たちは日々多くの情報にさらされており、一つ一つをじっくり検討する時間はありません。そのため、無意識のうちにこれらの「影響力の武器」に影響を受け、意思決定を行っていることが多いのです。これらの原則を理解することで、不当な説得から身を守るだけでなく、倫理的に活用することで、効果的なコミュニケーションやマーケティング活動を行うことができます。

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