1-4-27:ロッサー・リーヴス

ロッサー・リーヴスは「ユニーク・セリング・プロポジション(USP)」を提唱し、広告を科学として捉え、消費者を説得する戦略を重視しました。彼の手法は現代広告に影響を与え続けています。
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近日発売予定の著書『マーケティング大全』で紹介するマーケティングの発展に関して大きな影響を与えてきた26人を含む41人の紹介と、主要な理論や研究の概要を解説します。マーケティングの学習と実践に役立てるべく、41人の貢献の中に見える共通項や異なる視点を学びとっていただければと思います。

ロッサー・リーヴス(Rosser Reeves、1910年 - 1984年)は、アメリカの広告業界で大きな影響力を持った人物であり、「ユニーク・セリング・プロポジション(USP)」という概念を提唱したことで最もよく知られています。彼は、広告は芸術ではなく科学であり、消費者を説得して商品を購入させるための明確な戦略が必要だと考えていました。リーヴスは、テッド・ベイツ&カンパニー(Ted Bates & Company)という広告代理店で数々の成功を収めました。

「ユニーク・セリング・プロポジション(USP)」

USPとは、「独自の販売提案」と訳され、広告メッセージが持つべき3つの要素を指します。リーヴスは、効果的な広告は以下の3つの要素を満たしていなければならないと主張しました。

  1. 各広告は、提案(プロポジション)を行わなければならない。 単なるキャッチフレーズや製品の自慢話ではなく、「この製品を買えば、このような具体的な利益が得られる」という明確な提案が必要です。

  2. その提案は、ユニーク(独自)でなければならない。 競合他社が提供していない、または提供できないものでなければなりません。つまり、そのブランドだけが提供できる独自の価値を提示する必要があるのです。

  3. その提案は、大衆を動かす(販売する)ものでなければならない。 数百万人の人々を新しい製品に引きつけるだけの強力な訴求力を持っていなければなりません。

リーヴスは、消費者を説得して商品を購入させることを重視する(ハードセル)、直接的で力強い広告手法を好み、感情的な表現や抽象的なイメージではなく、製品の具体的な特徴や利点を明確に伝えることを重視しました。また、同じメッセージを繰り返し伝えることで、消費者の記憶に定着させることを重視しました。

「ユニーク・セリング・プロポジション(USP)」

  1. 各広告は、提案(プロポジション)を行わなければならない

  2. 提案は、ユニーク(独自)でなければならない

  3. 提案は、大衆を動かす(販売する)ものでなければならない

リーヴスの代表的な広告キャンペーン

  • M&M's:「ミルクチョコレートは口で溶けて、手で溶けない (Melts in your mouth, not in your hand)」: このUSPは、M&M'sチョコレートが他のチョコレートと異なり、暑い日でも手が汚れないという明確な利点を伝えています。

  • Anacin:「速い、速い、痛みを和らげる (Fast, Fast, Fast relief)」: このUSPは、Anacinが他の鎮痛剤よりも速く痛みを和らげるという点を強調しています。このキャンペーンは、同じメッセージを繰り返し伝えるというリーヴスの手法を象徴するものでもあります。

  • 大統領選のキャンペーン:「アイゼンハワー (アイク) を気に入っている (I like Ike)」: このシンプルなスローガンは、アイゼンハワーの親しみやすさを効果的に伝え、大統領選の勝利に貢献しました。

リーヴスのUSPの概念は、現代のマーケティングや広告においても重要な概念の一つとして受け継がれ、広告業界に大きな影響を与え、多くの広告キャンペーンで活用されてきました。しかし、彼のハードセル手法や反復を重視する姿勢は、USPに偏重するあまり、広告の創造性や芸術性が損なわれるという批判や消費者を単なる購入する機械と見なしているという批判があります。また、現代の多様化したメディア環境では、単一のメッセージを繰り返し伝えるだけでは効果を発揮しにくいという指摘があります。

ロッサー・リーヴスの主な著書

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《西口一希》

マーケティングに影響を与えた41人と理論