
マーケティング投資の実行に際し、アイデアの有効性を確かめる
5segsを活用し、5つの顧客セグメントにマーケティング戦略(5W1H)を設定できれば、マーケティングプランの策定を経て実行に移したいですが、軸となるアイデアの正当化が必要になることがあります。どうすればアイデアのポテンシャルを確かめ、実行に移せるか、状況別に3パターンで実務を解説します。
1.アイデアの有効性を事前に証明する必要がある場合
5segsやN1分析について経営陣に話しても、これらの概念とメソッドを知らなければ伝わらず、サポートが得られないかもしれません。新しい施策に積極的な経営陣だとしても、投資前にその有効性の証明を求められることが多いでしょう。事前確認の方法として、アイデアをそれぞれコンセプトに落とし込み、支持の程度を調査する「コンセプトテスト」が有効です。
コンセプトテストは、5segsのセグメントごとに評価できるように、5segsの基本3質問(5segs作成時に訊ねる「認知/購入経験/購入頻度」) の調査に加えてください。各セグメントがそれぞれのコンセプトにどのくらい反応したか、セグメントごとに人数換算できるので、具体的なポテンシャルを算定できます。 ロイヤル顧客と一般顧客でのコンセプトの受容度が高ければ、それぞれのロイヤリティが高まる可能性を示唆し、残り3セグメント(離反、認知未購入、未認知)の受容度は新規顧客獲得の可能性を示唆します。
セグメントごとにコンセプトを評価すると、新規獲得に貢献するもの、あるいは新規はそこまででなくても明らかにロイヤル化を促せるものなどの区別ができるので、マーケティング目的によって使い分けが可能です。当然、新規獲得目的ならメッセージや伝達手段、体感してもらう方法も自ずと絞られ、逆も然りです。
5segsを介さないコンセプトテストは、このロイヤリティ評価と新規獲得評価を分けて評価していない場合がほとんどで、新規獲得の可能性を過剰に見積もってしまうことがあります。逆に、ロイヤル層へのリスクを過小評価する場合もあります。コンセプト評価で顧客の80%が評価しても、残りの20%にロイヤル顧客が多く含まれることもあるのです。必ず、顧客セグメント別に分解すべきです。
ポテンシャル算定で留意すべきは、各セグメントに対して、そのアイデアをどれだけ広くリーチし、どれだけ早く、あるいはいつまでに伝えるかの認知形成のスピードをKPIに組み込むことです。マーケティングプランでテレビCMを使う場合の算定は、認知形成スピードも算定のベースが多いので比較的簡単ですが、デジタルや店舗を通じてのコミュニケーションは、接触数や接触までの時間を顧客の行動データから計算する必要があります。また、営業や代理店を通じて店舗に商品を展開する場合、配荷スピードとカバレッジの時間軸での予測も必要です。 ここまでできれば、策定したアイデアを特定の顧客層へ向けて5W1Hを伴ったマーケティングプランを展開し、顧客になっていただける人数、売上と利益、またその達成に必要な期間とスピードをおよそ算段できます。
2.アイデアの有効性をテストマーケティングする必要がある場合
この後、全国展開するのか、あるいは地域や販売ルートを限定(ECのみ、一部店舗のみなど)したテストマーケティングをするかという選択肢もあります。実施する場合、対象マーケット内での5segsの行動・心理データの変化をテスト前後で評価できるよう設計し、効果検証に活用します。 投資開始後は、投資レベルと対象ブランドの購入サイクルにより、5segsの変化を調べる頻度が決まります。
購入サイクルが1カ月程度と早く、テレビCMなどリーチの広いマスメディアを使う場合は、毎月の顧客調査を行って5segsの変化をトラッキングします。投資規模が大きければ、最低でも四半期ごとに5segsの変化を確認し、N1インタビューも継続しながら、アイデアにひもづくマーケティング戦略もしくはプランの強化改定を継続します。
重要なのは、実際の顧客の行動・心理データの分析、そして顧客を詳細に理解するN1分析を、セグメントごとに継続的に実行することです。 実際のところテストマーケティングは、地域や店舗限定、EC限定などで試しても、厳密にその顧客層のみに限定しきれません。テスト対象以外の顧客にも商品が手に入る状態になり、大抵は全国100%展開する場合よりも10~30%は良い結果が出て、過大評価しがちです。テスト地域での5segsをトラッキングしていれば異変に気づけるので、こうした問題による過剰評価は避けられます。
3.アイデアを全国展開できる状態にある場合
幸運にも経営レベルでの合意やサポートが得られていれば、最速で戦略をプランに落とし込み、実行に移します。ここでの目標は、実際のマーケットでのPDCAを通じて戦略やプランの精度を上げていくことです。 ただし、このようなアグレッシブな環境であっても、プランに関してKPI設定(顧客のリーチの大きさとスピード)は、1のケースのように、粗くでも作っておくことをすすめます。 ここまでで5segsのセグメントごとに行った行動・心理データ分析、N1分析を通じたアイデア策定ができていれば、新しい戦略でのコミュニケーションや施策からは、必ず成果が得られます。

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