顧客企業との試験導入がうまくいくと、本契約は近いと感じます。しかし技術が動くことと、顧客企業が予算を付けることは、別の判断です。試験の成功を契約の決定と取り違えるのが、この罠です。

「PoCは無事に終わりました。効果も確認できました」。営業会議で、担当者は次の四半期の受注に数えます。しかし顧客企業からの返事は、「社内で検討します」のまま止まっています。
架空のIT企業で考えてみます。工場向けの検査システムを十社でPoC、つまり本格導入の前に技術や効果を小さく試す検証を行いました。技術面で成功と評価されたのは十件中八件です。ところが本契約に進んだのは二件でした。残りの六件では、現場の担当者は満足していましたが、予算を決める人が検証に関わっておらず、効果を測る基準も契約の手順も決まっていませんでした。
技術と効果を試験で確かめることは正しい仕事です。罠が始まるのは、その試験を「動くか」の確認だけで設計し、「誰が、何を見て、いくらの予算を付けるか」を試験の前に決めなかったときです。

