売上が横ばいなら、事業は安定しているように見えます。しかし販促と値引きで保った横ばいは、安定ではなく、衰えの途中です。維持された売上を健全な安定と取り違えるのが、この罠です。

「主力事業は成熟期に入りました。売上は横ばいで安定しています」。経営会議で、この報告に危機感はありません。横ばいの内側で何が起きているかは、売上の一行では見えません。
架空の住宅用建材メーカーで考えてみます。主力の商品は五年間、売上がほぼ横ばいでした。ところが内訳を見ると、顧客数は五年で三割減り、販促費は二倍になっていました。減った顧客の分を残った顧客への値引きと販促で埋めていたのです。選ばれる理由を聞くと、五年前の「施工が早い」から、今は「安いから」に変わっていました。
横ばいの売上を守り、急な落ち込みを避けることは正しい仕事です。罠が始まるのは、売上の一行だけを見て、顧客数、利益の構造、選ばれる理由の変化を見なかったときです。

