国内で選ばれた商品なら、海外でも通じるはずだと思いたくなります。しかし顧客が感じる便益、価格の感覚、買い方は国によって異なり、言葉を変えれば伝わるとは限りません。パッケージと説明の翻訳を現地での価値の担保と取り違えるのが、この罠です。

「国内でカテゴリー一位です。あとは翻訳と輸出の手配だけです」。海外展開の会議は、実務の話から始まります。現地の顧客がその商品に何を求めるかは、国内と同じだという前提で進みます。
架空の調味料メーカーで考えてみます。国内では「さっぱりした味で、揚げ物に合う」という理由でカテゴリー一位でした。海外では、翻訳したパッケージで同じ容量、同じ価格帯で販売し、初年度の売上は計画の一割でした。現地では揚げ物に合わせる習慣がなく、容量は家庭の使い方に対して大きすぎ、価格は現地の同種の商品の二倍でした。決済と配送の条件も、現地の小売の慣行に合っていませんでした。
国内の成功を海外に持ち込もうとすることは、正しい挑戦です。罠が始まるのは、成功の理由が現地でも成り立つかを確かめず、翻訳と輸送を済ませたことを準備の完了と考えたときです。

