売上が伸びなくなると、「市場が飽和した」という説明が出ます。しかし飽和しているのは、今の商品を今の経路で今の用途に売る範囲だけかもしれません。今の範囲の限界を市場の限界と取り違えるのが、この罠です。

「国内の市場は年2%減っています。この分野は成熟しました」。経営会議では、この一言で投資の議論が終わります。次に出るのは、費用削減の話です。
架空の筆記具メーカーで考えてみます。国内の文具市場は年2%ずつ縮み、自社の売上も文具店経由が九割で横ばいでした。ところが、企業の記念品や採用活動の贈り物として名入れのペンを求める用途は伸びており、試しに法人向けの経路を作ると、その部分は一年で15%伸びました。商品は同じで、変えたのは用途と届け方でした。
市場の縮小を数字で認め、無理な投資を避けることは正しい判断です。罠が始まるのは、今の商品・地域・用途の範囲を市場そのものだと決め、範囲の外を見なかったときです。

