まとめて発注すれば、単価は下がります。しかし需要を確かめる前の大量発注は、変更できない在庫と設計を先に作ります。単価の安さを事業の得と取り違えるのが、この罠です。

「一万個で発注すれば、単価は三割下がります」。新商品の会議で、この提案に反対する理由は見つかりません。粗利は増え、計画の数字は良くなります。決まった後で、商品を初めて買う人は、まだ誰もいません。
架空のアウトドア用品メーカーで考えてみます。新しい携帯用の調理器具を一万個で発注しました。千個で発注する場合より、単価は三割安くなりました。発売から半年で売れたのは二千個です。買った人からは、「一回り小さければ持ち運べる」という声が多く出ました。しかし残りの八千個がある限り、小型版の投入は先に延び、設計の変更に踏み切れません。
単価を下げ、粗利を確保しようとすることは正しい仕事です。罠が始まるのは、需要と設計がまだ仮説の段階で、変えられない量と条件を先に固定したときです。

