

様々な言葉で語られる「ブランディング」
このシリーズでは、ブランディングに関する基本的な知識として、「ブランディングの定義」「3つの目的」そして「158語彙:8分類と62の優先語彙」を解説していきます。
ブランディングは、マーケティング領域における様々なテーマの中でも、特につかみづらいものです。ブランド構築に関して、ブランディング支援関連の広告代理店やコンサルティング会社がクライアントに提案している資料を見ると、このような文言が並んでいます。
競争は、機能的価値から情緒的価値の勝負になっています。ブランド独自の世界観をつくりましょう。精神的価値や存在意義がブランドです。
商品やサービスが均一化し、差別化が難しくなっていませんか? ものづくりの限界を超えましょう。将来に向けてブランドを見直しましょう。
無形のサービスで魅力を伝えることは難しくありませんか?
自社ブランドを伝えるのが難しい、だから言葉とデザインで明確にしましょう。
良い商品なのに売れていないので、ブランディングで解決しましょう。価格競争から脱しましょう。
ブランディングを通して、マーケティングコストを下げましょう。
ブランディングで社員のモチベーションを上げましょう。優秀な人材を集めましょう。採用における自社の魅力を発信しましょう。
信頼と親近感を築きましょう。ブランドとロイヤルティをつくりましょう。
顧客に象徴的、情緒的な「意味づけ」を行い、ブランドの長期間にわたる持続的な絆をつくりましょう。
ブランディングで持続的な競争優位性をつくりましょう。
ブランド広告でブランドをつくりましょう。
同じ品質の商品でも、ブランディングによって、競合よりも高い価格で販売が可能になります。
1,000円のエコバッグと100万円のブランドバッグの差異はブランドです。
このように、多くのブランディング支援を行う広告代理店やコンサルティング会社は、様々な文言でブランド構築の重要性を強調します。ブランドが競争の中で機能的価値から情緒的価値へのシフトを可能にし、独自の世界観をつくり出すこと、そして商品やサービスを差別化することが急務だと訴えます。
しかし、これらの文言は時にブランディングに対する過剰な期待を生み、結果として無駄な投資へとつながります。ビジネス上で行うブランディング活動は魔法でも趣味でもなく、目的と投資対効果としての結果を明確にした上で実行する必要があります。
「ブランディング」の定義
ブランドやブランディングに関しては数多くの書籍なども出されており、「マーケティング」という言葉と同じように、画一的な定義が共有されていません。Wisdom-Betaでは、ブランディングの主目的を「顧客がプロダクト(または企業)を記憶し、識別しやすくすること」と捉えます。
ブランディングの定義:顧客がプロダクトに見いだした「価値」、つまり便益と独自性を、ブランド名・色や形・デザイン・ロゴ・音・言葉など何らかの形でそのプロダクト特有の記憶として残し、そのプロダクトの忘却を防ぎ、想起を容易にし、初回購入や継続購入へとつなげるための手段 |
ブランディングの活動自体が、買ってもらうための「便益」になるわけではありません。ほとんどのカテゴリーにおいて、購入される理由、継続的に購入してもらえる理由は、機能的な便益や独自性にあります。ブランドを、名称や色や形、ロゴなどを用いて記号化すると、顧客はプロダクトの機能的な便益や独自性を記憶し、競合や同類から区別して認識しやすくなります。
ブランディングの目的を明確にすることは、無駄な投資や労力を避ける上で、非常に重要です。どのようなブランディング活動であっても、お金だけでなく時間や人員の投資を伴うので、明らかな投資活動です。投資である限り、活動の結果として、短期でなくとも売上か利益の向上を生み出さねばなりません。売上、利益、投資費用の関係は「利益=売上(顧客数×単価×頻度)-投資費用」なので、ブランディング活動を行う場合はおのずと「誰に向けて(WHO)、何を提供することで(WHAT)、どのような結果(顧客数、単価、頻度の増加)を期待するか」を明確に定義することがスタートラインになります。
ブランディングは、抽象的で計測しにくいものと考えられがちですが、どのような場合も次の3つの目的に分類できます。
ブランディングの3つの目的:
プロダクトを顧客に記憶してもらい、必要なときに思い出してもらう
1に加えて、情緒的・心理的価値を付加価値として創出する
プロダクト以外の、企業ブランディングや従業員・IRへのブランディング
どのようなブランディング活動も、目的が設定できれば、具体的なKPIを設定して効果を計測できます。ブランディングは趣味でも芸術でもなく、明確な目的をもった投資活動として捉える必要があります。次項から、3つの目的をそれぞれ解説していきます。
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