
モチベーション強化とリクルーティング貢献
本項では、以下の「ブランディングの3つの目的」のうち3つ目について解説し、最後に3つを表にして総括します。
ブランディングの3つの目的:
プロダクトを顧客に記憶してもらい、必要なときに思い出してもらう
1に加えて、情緒的・心理的価値を付加価値として創出する
プロダクト以外の、企業ブランディングや従業員・IRへのブランディング
3つ目は、顧客に直接「プロダクトを売る」のではなく、いわゆる「インナーブランディング」「コーポレートブランディング」「IRブランディング」です。
ブランディングは、直接的な売上向上を目指すだけでなく、プロダクトや企業の存在意義を通じて、社内外のモチベーション強化や優秀な人材のリクルーティングにも貢献します。企業の価値観や理念に共感する人材を引き寄せ、組織文化を強化することが目的です。KPIには、などが含まれます。KPIとしては、社内外におけるそのプロダクトや存在意義の認知率・想起率、従業員満足度、離職率の低減、就職応募率・就職意向やランキング、支援意向・勤務意向、そして実際の従業員のパフォーマンスが挙げられます。
3での対象者(WHO)は目的1と2と違って顧客ではなく、ビジネスの関係者や従業員、メディア、株主や投資家、学生などです。そうした方々に「この企業で働いてみたい」「応援したい」「投資したい」と感じてもらうためのブランディングになります。

言葉以外でも、デザインや動画などで存在意義を伝える
3を目的とするブランディングは、特定のプロダクトではなく企業として、またプロダクトの販売前でも実施されることがあります。WHOとなる社外関係者、従業員、潜在的な従業員に対して、プロダクトや企業がいったい何のために、誰のために存在し、なぜ存在することが重要なのか、他の選択肢よりも優れた価値とは何なのかをWHATとして訴求し、存在意義を強調します。
大切にしている価値観や企業理念に共感して働く従業員が増えれば、離職率の低減とともに日々の業務の品質が向上し、企業価値の向上が望めます。また、魅力的な企業理念に惹かれ、優秀な人材が集まりやすくなることにつながります。
これは、ビジョン、ミッションや、最近ではパーパスの意義と同等であると考えるとシンプルです。ビジョン、ミッション、パーパスなどは言葉で定義されることが多いですが、言葉だけでなく、より直感的にもわかりやすく、デザイン、アイコン、CMなどの動画、イベントなどで表現した活動です。売上や利益に対する直接の貢献は見えなくとも、プロダクトの向かう方向性と意義を伝え、モチベーションを向上させ、そのプロダクトをつくり支えるための協力を社内外で結集するための活動です。
3の事例:AppleのテレビCM「1984」
Appleは、1984年の初代Mackintosh登場時、米スーパーボウルの放送にテレビCM「1984」を出稿。当時、コンピューター市場を独占していた大手企業を批判的に描き、古い支配を打ち破る存在としてMackintoshを強く印象付けた。
当時の業績や株価と照らし合わせると、CM自体は必ずしも売上や利益に貢献したとはいえないが、「1984」は今日までマーケティングや広告の業界で語り継がれているため、Appleの従業員や広告代理店を始めとするビジネスパートナーの働くモチベーションの向上や人員の採用に好影響をもたらしていると推察される。話題を呼ぶ広告によって、自社が目指すビジョンやミッションを社内外のステークホルダーに浸透させ、Appleの未来へとつないだ広告だったとも解釈できる。
目的が明確であれば、無駄な投資を避けられる
ここまで、ブランディングの3つの目的を解説しました。ブランディングにおいて重要なのは、3つの目的の違いを理解した上で、今、自社が何を優先するために、何をブランディングの主目的とすべきなのかを明確にすることです。それができれば、ブランディングの実務はそれほど難しいものではありません。無駄な投資や、過剰な期待を避けられます。
3つのいずれかを目的とし、結果として「利益=売上(顧客数×単価×頻度)-投資費用」の売上変数である顧客数、単価、頻度の増加を通じて、売上の増加、利益の増加につなげていきます。決して短期的な結果ではなくとも、あらゆるブランディング活動は、この変数の増加に貢献すべきなのです。
ブランディングの3つの目的 |
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目的その1
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目的その2
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目的その3
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