2-2-22:9segsで販促とブランディングの成果を把握する

顧客起点マーケティング ビジネス構造の理解
9segsでは、顧客の移行を促進する販促とブランディングを可視化・定量化することで、投資効果を評価できます。
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9segsにおける販促とブランディング

手前のシリーズ「WHO WHAT HOWと価値の理解」において、ブランディングの3つの目的を解説しました。1.記憶化、2.感情的・情緒的な付加価値の創出、3.企業ブランディングや従業員向けブランディング、の3つです。9segsは、これらブランディングの成果を可視化することができます。

5segsで、顧客により上位層に移行してもらうことと同様に、9segsでは顧客により右へ、また上方向へ移行してもらうことが重要です。販促活動により、具体的に認知や購入頻度が高まれば、顧客は右方向へ移行していきます。逆に失敗すると左方向へ流出します。一方、ブランディング活動によってNPIを獲得すると、全体として下層から上層への移行が起こります。これらの各セグメントについても5segs同様に、アンケート調査から導き出した割合を人口推計に掛け合わせることで、推定人数を算出できます。その数を時系列でトラッキングすれば、施策への投資効果を把握することが可能です。

9segsの大きな特徴は、「左から右への顧客数の移行」が売上の増加につながる、いわゆる「販売促進」の効果と捉えられると同時に、「下段から上段への顧客数の移行」が、これまで可視化できていなかった「ブランディング」(次回購入意向)の効果として可視化できる点です。seg.9からseg.1へ、より右上方向への移行は、購入意向が増して実際に購入したということなので、販促とブランディングの両方が叶ったことになります。

販促とブランディングが同時に成功すると、seg.3やseg.1が増える結果となります。逆に購入意向が薄れたり、実際の購入頻度が下がったりすると、全体として偶数セグメントの人数が増えていきます。一般的に未認知より認知あり、NPIなしよりNPIあり層のほうが、顧客化や購入促進をしやすい状態にあります。あらゆる事業は、認知を獲得し購入頻度を高めて左側セグメントから右側セグメントへの移行を促し、またNPIを高めて下段セグメントから上段セグメントへの移行を促すことで、成長を実現できます。

ブランディングを聖域にしない

このフレームワークは、これまで統合的に見ることのできなかった、顧客拡大・売上拡大という販売促進的な変化と、顧客のロイヤリティ構築といったブランディング的な変化を同列で可視化・定量化し、統合的なマーケティング議論を可能にします。販促効果は、購入した人数や額や頻度といった行動データを取ればいいので効果測定が容易ですが、ブランディングに関してはその定義も計測指標も曖昧です。クリエイティブ領域が関与することで、一般的に良くも悪くもアート的な扱いを受けることが多く、科学的に説明・分解できないのが当然とされ、触れることのできない聖域のように扱われています。

販売促進の効果は、客観的に売上として数値化できます。販売促進の効果はコンバージョンという言葉でも表されますが、マーケティング業界内では、デジタルが登場する以前から「コンバージョン対ブランディング」の議論が長らく続いており、CMOやマーケティング担当者を悩ませるテーマでした。販売促進やデジタルマーケティングを主務とする層が、ブランディングは無駄な投資であると感じている一方で、テレビCMやデザインやPRを主務とする層は、ブランディングこそすべてであると感じており、「計測できないクリエイティブが重要である」という詭弁も聞かれます。

「販売促進は一過性でしかない、短期思考である」という意見も少なくないですが、顧客ベースで見ると、このような二項対立はまったく意味を成しません。9segs分析では、セグメントごとのN1分析と戦略構築、ポテンシャル評価を行いながら、販売促進活動とブランディング構築への投資の統合的な議論が可能になります。ブランディング目的として半ば聖域化しているマーケティング投資効果を、9segsの動きで確認しましょう。 もし、下から上への動きが見えなければ、顧客の購入意向が高まらない投資ということになり、それは「ブランディング」目的の投資として成立していません。顧客視点でのブランディングの可視化・定量化を行うことで、現行の施策が有効なのかを客観的に確かめることができます。

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《西口一希》

ビジネス構造の理解