2-2-11:N1起点のアイデアに再現性はあるか

顧客起点マーケティング ビジネス構造の理解
N1分析により顧客のカスタマージャーニーを理解し、独自性と便益を抽出することで、再現性あるアイデアを創出します。
2-2-11:N1起点のアイデアに再現性はあるか

きっかけから「アイデア」を創出する

ロイヤル顧客10~20人程度に対してN1分析を行い、一人ひとりのカスタマージャーニーを描けば、そのブランドやプロダクトとの初めての出会い(認知)、初回購入、継続購入、購入頻度の変化が十人十色で見えてきます。5segsでいえば、下の層から上の層へどう移行していったかがわかります。それが起きた要因は広告訴求だったり、ブランドの使用体験、口コミだったりといろいろありますが、重要なのは、その都度でどんなアイデアを感じ取ったか、つまりどんな便益と独自性を感じ取ったかです。

N1インタビューで、思わず驚く、笑ってしまう、信じがたいと思えるような事実が、その手がかりです。聞いたことがあるな、想定通りだなという既視感のある話や予想の範疇に入る内容には、手がかりはありません。

アイデアの手がかりは、これまでに聞いたことや見たことのない、特殊だったり非常識だと思えるような使用目的や使用方法や場面、商品に関連する個人的な経験や心理状態にあります。ここから独自性を抽出し、そこで得られる便益を明示することで、アイデアを開発できます。ロイヤル顧客から、想像していなかったような特殊なきっかけや事実を見つけられたら、それを具体的な便益と組み合わせてアイデア化し、一般顧客やほかのセグメントに拡大して再現することで、セグメント全体の上位への移行を促せる可能性が高いです。

その「アイデア」に再現性はあるか

アイデアの候補が複数見つかれば、具体的なコンセプト立案に移ります。コンセプト受容性を見定めるために、量的調査を通してコンセプトテストをすることをすすめます。コンセプトとは、「便益と独自性(=アイデア)」+「価格と商品・サービス情報」を指します。5segsの各セグメントにおいて、このコンセプトに対する購入意向と、独自性を感じるかを段階評価で簡単にスクリーニングすれば、およその可能性はセグメントごとに見えてきます。

ただし注意点として、アイデアは端的に表現して、様々な機能や便益を詰め込まないようにします。詰め込むと、調査上では高く評価されても、実際のマーケットではすべてを伝えきれず、好意的な反応が出ないというリスクが高いです。メインの媒体がテレビなら15秒でいえる内容、店頭ポスターやバナーなどなら数秒見てわかる内容にすることが基本です。

また現実的な問題として、N1分析で初回購入やロイヤル顧客化のきっかけを見つけても、現時点で再現性がないこともあります。例えば、10年前にカテゴリー初の商品として導入され、当時のセレブリティが使っていたので自分も使い始めて気に入ったから使い続けているが、今は類似品や競合品がたくさんある、といった場合です。使い続けているのは事実だけれど、そもそも購入のきっかけが当時のカテゴリーの新規性や流行に結びついていると、10年前と同じ訴求を新しい現代のセレブリティで展開しても、同じ結果は期待できません。

この判定には、同じロイヤル顧客の中でも長期の方と、最近に初回購入してロイヤル顧客化した人を調査設計の段階で抽出してN1分析を行うことで、突破口を探すことができます。

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《西口一希》

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