2-2-27:9segsにおける顧客動態の可視化①――成長ルート

顧客起点マーケティング ビジネス構造の理解
9segsカスタマーダイナミクスでは、心理変化を含めた成長ルート、復帰ルート、失敗ルートを可視化します。顧客の心理や移行を定量的に把握することで、事業成長を効果的に促進できます。
2-2-27:9segsにおける顧客動態の可視化①――成長ルート
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seg.1~4、特にseg.1の増加が事業成長につながる

5segsにおけるカスタマーダイナミクスを解説しました。ここからは、9segsにおけるカスタマーダイナミクスを詳説していきます。5segs カスタマーダイナミクスより顧客動態が複雑になりますが、購入ないし離反といった目に見える顧客行動に現れる前に「次に買おうと思っている/思っていない」という心理状態の顧客を定量的に把握できるので、先行的な顧客戦略の立案と実行が可能になります。

9segsでも、各セグメントの人数を把握したら、以降は定期的にその人数をトラッキングします。全体として左から右へ、下から上への移行が見られるかを把握して、戦略を見直していきます。例えば、認知不足が課題だと特定して認知獲得施策を打つのは、図でいうとseg.9から上位セグメントへの移行を狙うことになります。施策後に各セグメントの人数を確認し、seg.9が減ってseg.7へ移行し、そのまま初回購入が成立してseg.3やseg.4が増えていたら、新規顧客の獲得が進んでいると見なせるわけです。

ここに実際の顧客の動きを書き込んだものが、9segsのカスタマーダイナミクス図です。9segsのカスタマーダイナミクスも5segs同様、施策の目的を明らかにして実施し検証するPDCAサイクルを、客観的・科学的に回していくことができます。それが9segsカスタマーダイナミクスの運用です。

図の矢印は、成長とは、あるいは失敗や復帰とは具体的に顧客がどこからどこへ動くことなのかを示しています。何らかの施策を実行した結果として、現在顧客であるseg.1からseg.4をより増やすこと、特にロイヤル顧客でNPIがあるseg.1を増やすことが、すなわち事業成長といえます。

TAM内の9segs カスタマーダイナミクスを作成することで、マーケットの全顧客は、競合や代替品含めて常にダイナミックに動いていることが理解できます。セグメント間の顧客の動き方は、実はそれほど多くはありません。どんな事業においても、9segsでは顧客は計12の顧客動線(Route)のいずれかをたどります。顧客の動態を12のルートで可視化し、全顧客を自社9segsの最終的なゴール層であるseg.1(購入頻度が高く、次回購入意向もある顧客層)へ移行させることを目的として、すべてのリソースの最適配分を実現します。

ビジネスを伸ばす3つの成長ルート

12ルートは、成長・失敗・復帰の3種類に分けられます。それぞれ解説します。

まず、9segs カスタマーダイナミクスの図で「G」と示しているのはGrowth Route、ビジネスの成長ルートです。投資対効果が最も高い理想の事業成長とは、seg.9の未認知顧客がG1、G2、G3のルートをたどってseg.1の積極ロイヤル顧客になる一直線の道です。

プロダクトの独自性と便益が、競合や代替品に対しても明白であれば、それはマーケット内でニュースになり自動的に広がっていきます。顧客はメディアや口コミでそのプロダクトの存在と便益を認知し、その非代替性を求めて指名買い的に購入し、顧客のニーズ自体がなくなるまで購入し続けます。これは、プロダクト自体の便益と独自性が圧倒的に強いために、認知形成や販売促進のための投資がかからない、理想的な成長=直線的な成長ルートといえます。

具体的には「seg.9 未認知顧客」から次回購入意向のある「seg.7 積極 認知未購入顧客」へ(G1)移行し、初回購入を経て次の購入意向を保ったまま「seg.3 積極 一般顧客」となり(G2)、高頻度購入が成立して「seg.1 積極 ロイヤル顧客」になる(G3)という、一直線の道です。

仮に、過去に治療薬がなかった疾病に対して世界初の治療薬が完成すれば、代替品がない圧倒的な便益をもたらし、メディアが紹介し自然に世間に知れ渡るので、認知形成からロイヤル化までのPR、宣伝、販促活動への投資などの変動費はほぼゼロになるでしょう。営業部門も不要です。満たされていない強いニーズへのプロダクト開発は、非代替性の便益の提供であり、最も理想的です。

しかし、実際にはこのようなケースは少なく、どのマーケットにも競合や代替は存在しており、自社のプロダクトが顧客に提供できる独自性と便益のいずれかが弱いことがほとんどです。つまり、自動的に成長ルートが直線になることはなく、顧客の認知獲得や、心理変化を起こし興味を喚起して購入意向を創出し、購入行動につなげるための投資が必要となります。

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《西口一希》

ビジネス構造の理解