
5segsの分類に質問をひとつ加えると9segsになる
ロイヤル顧客と同様に、一般顧客、離反顧客、認知未購入顧客も、NPIによって2つに区別できます。そこに未認知顧客を足して、9層になります。つまり9segs分析は、5segsを90度右に倒して、NPIの軸を一本追加したものとなっています。
NPIとは、購入者本人の次回のブランド購入ないし使用意向です。具体的には、5segsで使用した3つの質問項目(認知/購入/頻度)に、「当該カテゴリーにおいて、次回に購入/使用したいブランド(はどれか)」を加えれば、対象顧客を計9セグメントに分解できます。

NPIはブランディングの効果指標になる
9segsでは、横軸が購入経験や頻度などの購入に関する顧客行動を捕捉して分類しているのに対し、縦軸は「次に購入する意向があるか」という顧客心理で分類しています。例えば何らかの販促活動を行った結果、左側のセグメントからより右側のセグメントへ顧客が移行したら、その活動は奏功したといえます。同様に、購入意向を高めることを目的とする施策を実施した結果、下段のセグメントから上段のセグメントへの移行が見られたら、それはブランディング効果があったと見なすことができます。
購入の増減という数値で効果が明確に把握できる販促活動と異なり、経営においても“ブランディング”は大事だといわれながらも、効果測定ができない、あるいは、事業成長とのつながりが曖昧な好感度のような指標が効果測定に使われてきました。9segsでは、次に顧客自ら購入する意向(NPI)をブランディングの効果指標として用いることで、その効果を明確な数字の変化で捉えることができます。
当然ながら、左から右へ、下から上への移行が同時に起こることが望ましく、すべての投資活動は全体として左下から右上方向への顧客の移行を目的としています。

NPIが高まると、下段から上段へ顧客が移行する
NPIとして捉えられる顧客心理は、離反などの目に見える顧客行動として現れる前にそのリスクに気づき、手を打つことにも役立ちます。
例えば「seg.1 積極 ロイヤル顧客」と「seg.2 消極 ロイヤル顧客」は、5segsでは同じロイヤル顧客ですが、その心理は異なります。NPIがあるseg.1は、明確にそのプロダクトを選んでいますが、seg.2には単に「安いから」「それしか選択肢がないから」「(店舗の場合)家から近いから」といった理由で購入している人が多く含まれます。そうした人は、次の購入機会により自分にとって便益があり代替性の大きい選択肢が登場すると、そちらに切り替える可能性が高いのです。安いことを理由に購入していた人は、同じような品質でより安いプロダクトが出ればそちらに流れるでしょう。
5segsで自社プロダクトのロイヤル顧客の割合が高く、安定していると思っても、その心理をひも解くと「より良い選択肢があれば移る」人が多い場合は事業として不安定です。その場合、seg.1の顧客へのN1分析を通して「なぜ積極化したのか(=NPIあり)、そのきっかけや理由は何だったのか」を洞察し、再現性がある仮説を立て、seg.2の顧客に訴求することが求められます。
seg.2の顧客は高頻度で購入しているので、seg.1と同様に、離反すると事業へのインパクトが比較的大きいセグメントです。そこで、なるべくseg.2からseg.1へと促しておくことが、外的要因によって突然顧客を失うリスクを低減することにつながります。seg.3から8についても、下段セグメントが想定以上に大きければ、上段セグメントへの移行を促しておくことが急務になります。
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