
ビジネスを失う5つの失敗ルート
世の中のほとんどのビジネスやプロダクトは、マーケットの全顧客をもれなく成長ルートに導くことはできません。カスタマーダイナミクス内での課題を明確化するために、図中で「F」と示したFailure Route(失敗ルート)を把握します。

失敗ルートには、プロダクトの独自性と便益が、①提供すべき顧客層に届いていない、②顧客層に届いているが理解されていない、③そもそも顧客ニーズに合っていない、という3つがあります。
その場合、「顧客心理」が変化しないので購入意向も形成されず、購入行動に移りません。また、一時は購入していたが、競合や代替品の存在で顧客ニーズが満たせなくなってしまった、もしくは顧客を取り巻く環境変化で顧客ニーズ自体が変化した場合、顧客は離反します。
具体的には、次の5つの失敗ルートがあります。
まずF1は「seg.9 未認知顧客」の認知は獲得したが、そもそも顧客に便益と独自性が理解されなかった、またはニーズやインサイトに合わず「seg.8 消極 認知未購入顧客」になるルートです。
次にF2は、購入意向があったものの、様々な情報に触れたり体験したりする中で消失してしまう、「seg.7 積極 認知未購入顧客」から「seg.8 消極 認知未購入顧客」になるルート。同様にF3は「seg.5 積極 離反顧客」から「seg.6 消極 離反顧客」になるルート。
F4は、一般顧客からの離反です。一度は顧客化したが競合や代替品に移った、顧客側の都合でニーズ自体が消失したといった理由で、「seg.3 積極 一般顧客」から「seg.4 消極 一般顧客」経由で「seg.6 消極 離反顧客」に移行します。
最後に、F2と同じ購入意向を失う動態ですが、F5として「seg.1 積極 ロイヤル顧客」から「seg.2 消極 ロイヤル顧客」を経由し、seg.4の低頻度に移行する、またはseg.6へと離反するルートがあります。売上や利益を支える購入額や頻度の高い積極ロイヤル層の離反は、ビジネスのインパクトが短期的にも中長期的にも大きくなります。
競合やカテゴリー外の代替品を使う顧客の心理
購入意向を保ったまま頻度が減る、seg.1からseg.3への移行、そのまま離反するseg.3からseg.5への移行という動態もありますが、ここではFルートと捉えていません。例えば、マクドナルドを毎朝利用していた顧客が転勤になり、近所に店舗がなく利用できなくなると、意向はあるが離反状態になります。これは深刻な心理的変化ではなく外的起因なので、顧客の心理と行動変化を可視化するカスタマーダイナミクス上では注力すべき対象としていないのです。
ちなみにseg.9と、主に失敗ルートで着地するseg.8、seg.6には(競合)(カテゴリー外)と記しました。これらのセグメントの顧客は、自社プロダクトのTAMでありながら、競合商品やカテゴリー外の代替品を使っている場合が多いです。たとえば「seg.6 消極 離反顧客」は、以前は自社プロダクトを使っていたのに現在は使用していないわけで、ニーズそのものが消失していなければ、それを何らかの他の手立てで埋めていると考えられます。
消極層を積極層に引き上げる4つの復帰ルート
成長ルートの強化、また各失敗ルートに対する復帰策として、具体的にRecovery Route(復帰ルート)を把握して管理します。対象とする顧客と、プロダクトが提供できる便益と独自性が合っているはずなのに、購入意向のないseg.2、4、6、8の顧客がそのまま留まる理由は多くの場合、①便益や独自性を理解していない、②誤解している、のいずれかです。または、③独自性や便益を正確に理解した上で、顧客自身のニーズとは無関係、不必要と思っていることです。
いずれのケースでも、自社プロダクトの提供すべき独自性や便益の内容自体、あるいはその伝え方や営業活動を含む訴求自体の見直しが必要です。

購入意向のないseg.2、4、6、8から、購入意向を促してseg.1、3、5、7へ引き上げるのに有効な策は、すでに次回購入意向のある既存顧客(seg.1やseg.3)に対する訴求や施策とは異なるため、セグメントを分けて個別に考える必要があります。
具体的なルートは、次の4つです。まずR1は、「seg.8 消極 認知未購入顧客」から購入意向のある「seg.7 積極 認知未購入顧客」を経由し、「seg.3 積極 一般顧客」への初顧客化です。
次にR2は「seg.6 消極 離反顧客」から購入意向のある「seg.5 積極 離反顧客」を経由し、「seg.3 積極 一般顧客」への復帰です。
R3は「seg.4 消極 一般顧客」から購入意向のある「seg.3 積極 一般顧客」へ引き上げ、さらに「seg.1 積極 ロイヤル顧客」への移行。そしてR4は「seg.2 消極 ロイヤル顧客」から「seg.1 積極 ロイヤル顧客」への引き上げです。
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