
自社と競合で重なる顧客の数からわかること
オーバーラップ分析は、具体的にはマトリクス図を作成して、自社と競合の顧客をそれぞれ重ね合わせて各セルの人数を把握します。調査において、回答者が自社および競合の5segsでどの層に位置しているかを追跡することで、各セルの人数が算出できます。例えば、自社プロダクトは高頻度で買っているけれど競合はより低頻度で買っている人なら、「自社ロイヤル×競合一般」のセルに属します。
自社プロダクトは知らず、競合のことは知っているが買ったことがない人なら、「自社未認知×競合認知未購入」となります。つまり自社の認知より先に競合に認知されているわけで、このセルの人数が逆パターンの「自社のことは知っているが買ったことはなく、競合は知らない」人より多ければ、競合に認知獲得の点で劣勢であることがわかります。
また、自社と競合ともに離反した層は、双方にとってこれから新規(復帰)顧客化が見込める層です。薄く色付けした5セル分は、いずれかのブランドの使用体験はあるものの、現在どちらのブランドも使用していません。中間の色付けをした3セル分は、いずれかのブランドの認知はあるものの、どちらのブランドも使用経験がありません。図右下1セルのみの濃い色の部分は、両ブランドともに認知すらしていない層です。
多くのブランドは、売上が伸び悩むとこれらの層の掘り下げをしないまま「もう顧客は獲得しきった、もう売れない」とマーケティング投資をやめて、その成長ポテンシャルを放棄しています。これは大きな機会損失になります。仮に自社が市場に先行して進出していたとしても、先の色付けした3つの層の存在に気づき「まだ市場に顧客化の余地が大きい」とつかんだ競合や未進出ブランドに後から追い抜かれることがあるので、オーバーラップ分析も定期的に行って機会損失を回避します。

他社2社の分析から、新規参入のチャンスが見える
5segsは、新規カテゴリーへ参入する際の戦略構築にも活用できます。まず、これから参入しようとしている市場の複数の主要ブランドに関して、同様の調査を行ってそれぞれの5segsを作成します。そして主要ブランド同士でのオーバーラップ分析を行えば、主要ブランドがまだ獲得てきていない顧客層を可視化・定量化できるので、その未開拓層に向けた「プロダクトアイデア」を開発することで、同質化に陥らない独自性のある新規参入の可能性を見出せます。
具体的には、先ほど自社ブランドと競合ブランドAについて作成したマトリクス図を、主要ブランド同士で作成していきます。そして前述の薄い色から濃い色のセグメントに注目して、例えば両方とも認知しているのに購入したことがないのはなぜか、などを深堀りしていきます。その層に受容される「アイデア」を開発し、そのセグメントの市場における割合を加味することで、新規参入で獲得できる規模も算段できます。あるいは、ボリュームの大きいセグメントから優先的に深堀りしていくことも一つの手です。
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