
「肌ラボ」の一般顧客のロイヤル化
セグメント間の心理の違いを丁寧に把握したことで、より多くの顧客の支持につながった事例を紹介します。
例えば化粧水「肌ラボ」では、ロイヤル顧客へのN1分析から「このベタつきが保湿の証拠」という意識と、「安価だから毎日たっぷり使う」という行動が明らかになりました。一方、一般顧客は保湿力は評価しているものの、ベタつきにはマイナスの評価をしており、毎日は使っていませんでした。このことから、「ベタつきが保湿の証拠」だと認識してもらえれば一定の一般顧客は納得してロイヤル化するのでは、という仮説を立てました。
そして、実際に店頭POPなどで手が頬に吸いつく様子やもちもち感を訴求したところ、 予想以上に一般顧客がロイヤル化し、大きな売上増につながりました。同時に、ベタつきが生理的に嫌いな人にはこのアプローチが効かないことも見越して、ベタつきを抑えたライトタイプを発売したところ、こちらも一定数の顧客に支持されました。
もしここで、ロイヤル顧客と一般顧客を区別しないアンケート調査などから売上向上を狙っていたら、単に「ベタつきが気になる」人に対してライトタイプを発売する、という策にとどまっていたかもしれません。ただし、ライトタイプはもともとの商品より保湿力が劣るので、離脱の割合も高くなります。その中には、保湿力を訴求してロイヤル化できたはずの顧客も含まれるので、全体として現在顧客の減少を招いたことが予想されます。

聞くポイントはセグメントごとに違う
N1分析は、顧客セグメントに応じて理解すべき点を明確にしておけば、難しくありません。ロイヤル顧客であれば、ブランド認知・使用意向・購入意向を持ったきっかけを時系列で聞き、現在使用の実態・満足/不満足、競合ブランドへの認識、好きな点と嫌いな点、などを聞けばいいのです。一般顧客にも同様に訊ねて、ロイヤル顧客とのギャップがどこにあるか、そのギャップが生まれた原因やきっかけを探ります。離反顧客には、どこに離反のきっかけがあったのかを掘り下げます。
認知未購入顧客や未認知顧客には、まずプロダクトの説明をして、なぜ知っているだけで買っていないのか、あるいはなぜ知らないのかを探ります。「プロダクトアイデア」や「コミュニケーションアイデア」を知った上でも魅力を感じてもらえないのか、それとも単に伝わっていないだけなのか、などを把握していきます。知ってもらえれば購入の可能性が高まりそうなら、メディア投資が少ないことが問題なのかもしれません。また、ロイヤル顧客が評価しているプロダクトの良さを伝えて反応を見ることで、どこに問題があるのか、どんなきっかけを提供すれば顧客化するかの可能性が見えてきます。
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