
2007年1月9日、Appleが初代iPhoneを発表した際、当時のサムスンは、日本のSONY同様に、携帯電話市場において確固たる地位を築いており、主にフィーチャーフォン(ガラケー)とWindows Mobileを搭載したスマートフォンを製造していました。結果からみれば、サムソンもiPhoneの革新性を見落とし、タッチスクリーンだけのスマートフォンが主流になることはない、と考えていた節があります。しかし、その後、iPhoneの急成長を目の当たりにし、サムスンは急速に戦略を転換し、Appleとの競争を本格化させていきました。
サムスンの経営陣のiPhoneに対する懐疑的な評価
iPhoneが発表された2007年当時、サムスンはすでに携帯電話市場で一定の成功を収めていました。特に、薄型携帯電話「ウルトラエディション」シリーズや、カメラや音楽機能を搭載した高機能フィーチャーフォンが好調で、当時の市場トレンドにしっかりと適応していました。そのため、サムスンの経営陣は、iPhoneに対してSONY同様に、物理キーボードがないタッチスクリーンだけではビジネスユーザーには受け入れられない、と考えていたようです。これは、当時のスマートフォン市場でBlackBerryのような物理キーボード付きデバイスが主流であり、タッチスクリーンがビジネスユースに適していないとされていたためです。
実際に、iPhoneの登場直後、サムスンはタッチスクリーンデバイスの開発を加速させたものの、当初はフィーチャーフォンの延長線上で考えられていました。2008年に発売された「Instinct」や「Omnia」はタッチスクリーンを搭載していたものの、従来の携帯電話のインターフェースに近い形で設計されており、iPhoneのような直感的なUIを実現していたわけではありませんでした。この時期のサムスンのスマートフォンは、主にWindows Mobileを採用していたため、iPhoneのようなスムーズなタッチ操作やアプリストアのエコシステムを持っていなかったのが大きな違いでした。
サムソンの当時マーケティング部長であったリー・ヨンヒ(Lee Young-hee)は、2008年のメディアのインタビューで、iPhoneとWindows Mobileを採用したサムソンの携帯電話Omniaを比較して、「たしかにAppleはいい製品を市場に投入しました。一方、当社のOmniaは、我々が現時点でベストと考える製品として開発しており、どちらが優れた製品なのかを1つ1つの機能で比較してもあまり意味がないと思います。例えばOmniaは、高機能な500万画素カメラを搭載していますが、これはOmniaがカメラの機能も重要視しているからです」と発言しています。
Androidへの本格参入と「Galaxy S」の誕生
程なく、iPhoneの成功を見たサムスンは、2008年以降、Androidへの本格参入を意思決定しました。GoogleがAndroid OSをオープンソースとして提供することを発表すると、サムスンはすぐにAndroidを採用し、iPhoneと同様のフルタッチスクリーン型のスマートフォンを開発し始めました。そして、2010年に「Samsung Galaxy S」を発表。これがサムスンにとって初の本格的な「iPhone対抗スマートフォン」となり、以降、GalaxyシリーズはAppleの最大のライバルとして成長していきました。サムスンは、Appleと異なり、「ハードウェアのバリエーションを増やし、多様な価格帯で展開する」戦略を採用し、iPhoneがターゲットとしない低価格市場にも積極的に参入しました。これにより、特に新興市場ではiPhone以上のシェアを獲得することに成功しました。
特許訴訟の勃発
2011年、Appleは「サムスンがiPhoneのデザインとUIをコピーした」として特許訴訟を起こしました。これは、スマートフォン市場におけるAppleとサムスンの全面対決の始まりとなりました。Appleは、「サムスンはiPhoneを模倣したデザインを採用し、不正に市場を侵食している」と主張し、サムスンを相手取り訴訟を起こしました。この訴訟は長期化し、2012年には米国の裁判所がサムスンに対し、Appleへ10億ドル以上の賠償を命じる判決を下しました。しかし、サムスンもこれに反論し、Appleがサムスンの通信技術特許を侵害しているとして訴訟を起こし、スマートフォン業界での両社の対立はさらに激化しました。
市場シェアでの競争
Appleとサムスンは、以降、スマートフォン市場のシェア争いを繰り広げました。Appleはプレミアム市場に特化し、サムスンは低価格帯からハイエンドまで幅広いラインナップを展開することで、市場を分割する形となりました。2020年代に入ると、サムスンは折りたたみスマートフォンの開発など、新たな技術革新に取り組み、Appleとは異なる戦略を模索するようになりました。
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