4-1-25:目標勾配効果、ライセンシング効果、楽観バイアス、リーセンシー効果

目標勾配効果とは、目標に近づくにつれて、達成へのモチベーションが強くなる現象です。ゴールが見えると、人はより一生懸命取り組む傾向があります。
4-1-25:目標勾配効果、ライセンシング効果、楽観バイアス、リーセンシー効果

心理学の9分類に続き、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。

本項では優先すべき理論61~64として、目標勾配効果、ライセンシング効果、楽観バイアス、リーセンシー効果を解説します。

目標勾配効果(Goal Gradient Effect)

目標勾配効果とは、目標に近づくにつれて、その目標を達成しようとするモチベーションが強くなる現象です。人はゴールが見えると、それに向かってより一生懸命取り組む傾向があります。

  • ロイヤリティプログラム:顧客が目標(例えばポイントを貯めて報酬を得る)に近づくにつれて、購入行動が加速します。カフェのスタンプカードで、「あと1回で無料ドリンク」のように目標が見えると、顧客は頻繁に訪れるようになります。

  • プログレッシブディスカウント: 購入ごとに割引率が上がることで、次の購入意欲を高めます。例えば「3回購入すると20%オフ」といったキャンペーンでは、2回目の購入を終えた顧客は3回目の購入を早めに決める傾向があります。

  • フィットネスアプリの目標設定:運動目標に近づくとモチベーションが上がる仕組みを活用します。フィットネスアプリが「あと500歩で今日の目標達成」と通知すると、ユーザーはその目標を達成するために積極的に動きます。

ライセンシング効果(Licensing Effect)

ライセンシング効果とは、人が善行を行った後に自分に対する免罪符を感じ、次の行動で自己規制を緩める現象を指します。例えば、健康的な選択をした後に、逆に不健康な選択をすることがあります。

  • ダイエット食品の販売:健康的な食品を選んだ後に、その見返りとして不健康な食品を買いやすくなります。それを踏まえて、ダイエット食品を購入した顧客に対して、デザートやスナックのプロモーションを行います。

  • 環境に優しい商品の販売: エコ商品を購入した後に、その他の非エコ商品を買いやすくなります。環境に優しい商品を購入した顧客に、通常の消費財の特別オファーを提供し、購入を促します。

  • フィットネスジムの会員特典:ジムに通った後に、自分へのご褒美としてカロリーの高い食品を買うことがあります。フィットネスジムで運動した後の会員に、ジム内のカフェで高カロリースナックの割引を提供します。

楽観バイアス(Optimism Bias)

楽観バイアスとは、人々が自分に対してポジティブな出来事が起こると過信し、ネガティブな出来事は自分には起こらないと考える傾向のことです。

  • ローン商品の販売:顧客が将来の収入や支出について楽観的に考えることで、ローンやクレジットカードを容易に契約します。「今すぐ手に入れて、将来に支払う」といったメッセージで、顧客が将来の収入に楽観的になり、ローンを組みやすくします。

  • 健康商品やサプリメントの販売:自分の健康状態について楽観的に考え、予防的に健康商品を購入することがあります。「これひとつで健康を守る」といった広告で、顧客が自分の健康状態について楽観的に考え、購入を促進します。

  • 保険商品の販売:顧客はリスクを低く見積もるため、保険の重要性を強調されることで購入しやすくなります。「万が一のために安心を」というメッセージで、顧客は自分には事故が起こらないと楽観的に考えながらも、念のために保険を購入します。

レセンシー効果(Recency Effect)

レセンシー効果とは、人が一連の情報を記憶する際に、最後に提示された情報を最もよく覚えている現象です。これは、最新の情報が短期記憶に強く残りやすいためです。

  • キャッチフレーズの使用:広告の最後に強力なキャッチフレーズを入れることで、顧客の記憶に残るようにします。テレビ広告の最後に「Just Do It」といった覚えやすいフレーズを使用し、ブランドメッセージを強調します。

  • 最後のオファー:メールマガジンや広告の最後に特別オファーを入れることで、印象を強めます。メールの最後に「このメールを見た人だけの特別割引!」と記載し、顧客の購入を促します。

  • プレゼンテーションの締めくくり:プレゼンテーションや商品説明の最後に強調したいメッセージを伝えることで、記憶に残りやすくします。新商品発表会の最後に「この製品がもたらす未来」を強調するビジュアルやメッセージを伝え、忘れられないようにします。

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《西口一希》

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