

心理学の9分類に続き、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。
本項では優先すべき理論10~12として、期待理論、キャッシュレスエフェクト、ギャンブラーの誤謬を解説します。
期待理論(Expectancy Theory)
期待理論は、人が行動する動機が「期待」「価値」「実行可能性」の3つの要素に基づいていることを示しています。人々は、目標を達成できると期待し、その目標が自分にとって価値があり、目標達成のための行動が実行可能であると信じる場合に、行動を起こします。
ロイヤリティプログラムの設計:ポイントを貯めることで特典が得られるロイヤリティプログラムを導入し、顧客の期待を高めます。「10回購入すると1回無料」といったプログラムを提供し、顧客が特典を期待して継続的に購入するように促します。
明確な成果を示す広告:製品やサービスの利用によって得られる具体的な成果を強調します。「このダイエットプログラムを利用すれば、3カ月で5キロ減量」といった明確な期待値を示し、顧客の購入意欲を高めます。
成功体験の共有:実際の利用者の成功事例を広告や口コミで共有し、他の顧客の期待を高めます。「このスキンケア製品で肌が劇的に改善しました」という顧客の声をウェブサイトやSNSで紹介し、他の顧客の期待感を高めて購入を促します。
キャッシュレスエフェクト(Cashless Effect)
キャッシュレスエフェクトとは、現金ではなくクレジットカードやデジタル決済を使うと、顧客が支出に対して感じる痛みが軽減され、結果として支出が増える現象です。
デジタル決済キャンペーン:デジタル決済を推奨することで、消費額を増やします。コーヒーチェーンが「モバイル決済で10%オフ」といったキャンペーンを行い、キャッシュレス決済を促進することで、顧客が高価格のメニューを選びやすくなります。
サブスクリプションサービス:クレジットカードによる自動更新で、サービスの継続利用を促進します。ストリーミングサービスが、クレジットカード払いによる月額プランを提供し、手軽に契約を続けることで解約率を低下させます。
レストランのキャッシュレスオプション:キャッシュレス決済を導入することで、顧客が多めに支出する傾向を利用します。レストランがクレジットカードやQRコード決済を導入し、テーブル会計での消費額を増加させます。
ギャンブラーの誤謬(Gambler’s Fallacy)
ギャンブラーの誤謬とは、「過去の出来事が未来の確率に影響を与える」と誤信する現象です。例えば、ギャンブルにおいて「最近赤が続いているから次は黒が出るだろう」といった考え方です。「過去の出来事が将来の確率に影響を与える」という誤った認識に基づく認知バイアスです。ランダムな事象に対して、人々が「連続している結果が次に反転するだろう」と考えてしまう現象です。悪用されることが多いので、活用に関しては法的さらに道徳的に熟慮する必要があります。
抽選キャンペーンや、プレゼントを配布するプロモーション:過去のキャンペーンで当選していない顧客をターゲットに、「今まで何度も応募しているのに当選していない方へ、次こそはチャンスです!」といったメッセージを送り、応募者に「今度こそ自分が当たるはず」と感じさせることで、さらに応募を促します。
宝くじのプロモーション:過去の結果が未来に影響を与えると信じさせます。宝くじ会社が「今月は当たりが多い月!」と宣伝し、顧客に「今買えば当たりやすい」と錯覚させます。
オンラインゲームやソーシャルゲームの「ガチャ」:これらのゲームでは「ガチャ」と呼ばれるランダムアイテムを引くシステムにおいて、プレイヤーが「今までレアアイテムが出ていないので、次は出るかもしれない」と考えるように設計されています。
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