170の理論:9分類と、64の優先理論
マーケティングに関連する心理学、行動心理学、行動経済学の理論や仮説は非常に多く存在します。マーケティングに活用できる心理学の理論を、170選定しました。実務に携わるマーケターが学習しやすいように9分野に分類解説し、さらに、優先順位の高い64の理論や仮説を選定しました。
これらの理論や仮説を体系的に学習することで、マーケティングの実務において顧客の心理や行動をより深く理解し、効果的なHOW(手段手法)を立案することができます。顧客にとって有益で信頼できるマーケティングを実践することで、長期的な顧客関係を築き、ビジネスの持続的な成長を実現していただきたいです。
顧客にとって信頼できるマーケティングの実践へ
まずは、マーケターの皆さんがすぐに活用できる9分類の概要と、代表的な理論を解説します。3つずつ紹介していきますので、ご自身の顧客としての経験も思い返していただきながら、読み進めてみてください。
1. 認知バイアスと判断の偏り
認知バイアスは、人間の判断や意思決定が客観的ではなく、経験や感情、思考パターンに基づいて歪められる現象です。例えば、人間は初めに提示された情報が後の判断に強く影響を与えるため、実際の価値とは異なる決定をしてしまうことがあります。このようなバイアスは、日常的な選択からビジネスの意思決定に至るまで、広範囲に影響を及ぼします。
フレーミング効果(Framing Effect):商品の価格表示を「通常価格1,000円が20%引きで800円」とする場合と、「特別価格800円」とする場合で、同じ価格でも前者の方が得した気分になり、購入意欲が高まることがあります。
デコイ効果(Decoy Effect):2種類のポップコーン(小300円、大500円)を売っているとします。ここに中サイズのポップコーンを450円で追加すると、大サイズの方が割安に感じられ、多くの人が大サイズを購入するようになります。
プロスペクト理論(Prospect Theory):「確実に5,000円をもらえる」選択肢と「50%の確率で1万円をもらえるが、50%の確率で何ももらえない」選択肢があった場合、確実に5,000円をもらえる方を選びがちですが、逆に「確実に5,000円を失う」選択肢と「50%の確率で1万円を失うが、50%の確率で何も失わない」選択肢があった場合、後者のリスクを選ぶ傾向があります。
2. 感情と影響
感情は、意思決定や行動に直接的に影響を与えます。喜びや悲しみ、興奮などの感情が、購入行動を促進したり抑制したりします。例えば、セール中に感じる高揚感が衝動買いを誘発することがあります。また、期待や信念が実際の体験を変えることもあります。
プラセボ効果(Placebo Effect):高価な栄養ドリンクを飲むと、仮に実際の効果がなかったとしても「高価だから効くはず」と思い込み、実際に体調が良くなったと感じることがあります。これは、顧客の期待や信念が実際の感覚に影響を与える例です。
スノッブ効果(Snob Effect):限定版の高級時計を持つことで、自分が他人よりも特別であると感じることがあります。スノッブ効果は、他人が持っていないものを所有することで、満足感や優越感を得る現象です。
スカーシティ効果(Scarcity Effect): 「数量限定」や「期間限定」といった販売戦略を利用すると、顧客は「今、買わなければ手に入らない」という感情に駆られて購入を急ぎます。例えば、限定品の販売キャンペーンでは、多くの人が商品を手に入れるために早めに行動する傾向があります。
3. 意思決定と自制心
自制心や自己制御は、長期的な目標を達成するために短期的な欲求を抑える能力です。例えば、ダイエット中にお菓子を食べないようにすることや、衝動的な買い物を避けるために予算を守ることがこれに該当します。自制心が強いと、合理的な意思決定がしやすくなります。
沈没費用の誤謬(Sunk Cost Fallacy):映画のチケットを購入した場合、映画が始まってつまらないと感じても「お金を払ったからもったいない」と考えて最後まで観続けることが多いです。この現象は、すでに費やした時間やお金を考慮して、合理的な判断を歪めてしまうものです。
ライセンシング効果(Licensing Effect):ダイエット中に「今日はジムで1時間運動したから、ケーキを食べても大丈夫」と考えてしまうことがあります。これは、自分が良い行動をしたと感じた後に、その行動を正当化するために自分に対してご褒美を与えてしまう現象です。
ハイパーボリック割引(Hyperbolic Discounting): 「今すぐに1,000円を受け取るか、1週間後に1,500円を受け取るか」という選択肢があると、多くの人が今すぐに1,000円を受け取る方を選んでしまいます。これは、短期的な報酬を長期的な報酬よりも高く評価する傾向があるためです。
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