顧客にとって信頼できるマーケティングの実践へ
マーケティングに関連する心理学の9分類を再掲します。本項では、4(記憶と学習)5(社会的影響と同調行動)6(モチベーションと目標設定)を解説します。
4. 記憶と学習
記憶は、過去の経験や学んだことを思い出す能力で、学習はその情報を蓄積するプロセスです。企業はリズミカルなスローガンやキャッチーなビジュアルを使用して、生活者の記憶に強く残るよう工夫します。記憶に残りやすい情報は、ブランド認知度の向上につながります。
プライミング(Priming): スーパーマーケットで商品を並べる際に、ヘルシーな食材の隣にダイエット関連の商品を配置することで、顧客が健康志向の考えを強め、そのエリアでの購入意欲が高まります。プライミング効果により、顧客の記憶や認知に特定の情報が影響を与えます。
プライマシー効果(Primacy Effect):新商品の紹介プレゼンテーションで、最初に強調された特徴やメリットが顧客の記憶に残りやすい現象です。例えば、最初に「このシャンプーは髪を強くし、ツヤを与えます」と伝えることで、その特徴が最も記憶に残りやすくなります。
ピークエンドルール(Peak-End Rule):レストランの体験において、非常においしいデザート(ピーク体験)と最後に提供される無料のミント(エンド体験)が印象的であれば、全体の食事の経験が高く評価されます。このルールは、顧客は全体の体験よりもピークとエンドの瞬間に基づいて対象を評価するという傾向を指します。
5. 社会的影響と同調行動
社会的影響とは、他人の行動や意見に影響を受けることです。同調行動は、周囲の人々の行動を真似する傾向を指します。例えば、行列ができているレストランに人が集まりやすいのは、他人の選択が自分の行動に影響を与えるためです。これにより、生活者は周囲の人々の行動を基に商品やサービスを選ぶことが多くなります。
バンドワゴン効果(Bandwagon Effect): 新しいスマートフォンが発売され、多くの人がそのスマートフォンを購入すると、それを見た他の人も「みんなが買っているから良い商品だ」と感じて購入する現象です。例えば、行列ができているレストランに人が集まるのもバンドワゴン効果の一例です。
返報の法則(Reciprocity Principle):無料サンプルを配布することで、受け取った顧客が「何かお返しをしなければ」と感じ、その製品を購入する可能性が高まることです。例えば、化粧品店で試供品をもらった後に、その化粧品を購入するケースが挙げられます。
権威バイアス(Authority Bias):医師や専門家がおすすめする商品は、信頼性が高く感じられ、顧客の購入意欲が高まる現象です。例えば、歯科医が推薦する歯磨き粉は、他の製品よりも効果があると信じられやすくなります。
6. モチベーションと目標設定
モチベーションは、何かをしようとする意欲であり、目標設定はその意欲を具体的な行動に結びつけるプロセスです。明確な目標を設定することで、その達成に向けた動機付けが強化されます。例えば「あと3回で1杯無料」といったスタンプカードは、顧客の購入意欲を高めるための効果的な目標設定の一例です。
目標勾配効果(Goal Gradient Effect):コーヒーショップで「あと3杯で1杯無料」というスタンプカードを導入すると、目標に近づくにつれて顧客の購入頻度が増加する現象です。例えば、スタンプカードに8個のスタンプが必要な場合、最初の数個よりも残り3個の方が速く埋まる傾向があります。
期待理論(Expectancy Theory): 社員が達成可能な目標を設定され、それに対して報酬が約束されると、その目標達成のために一生懸命に働く現象です。例えば、営業チームが売上目標を達成した場合にボーナスを支給することを約束すると、社員のモチベーションが高まり、目標達成のための努力が促進されます。
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