4-1-17:ナッジ理論、認知的不協和、ネガティビティバイアス

ナッジ理論とは、選択肢を制限することなく、人々の行動を望ましい方向へそっと促すための小さな働きかけのことです。
4-1-17:ナッジ理論、認知的不協和、ネガティビティバイアス

心理学の9分類に続き、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。

本項では優先すべき理論37~39として、ナッジ理論、認知的不協和、ネガティビティバイアスを解説します。

ナッジ理論(Nudge Theory)

ナッジ理論とは、人々の行動を特定の方向に向かわせるための小さな介入や設計のことです。ナッジは、人々の選択肢を制限せずに、より望ましい行動を促進するための方法です。

  • 健康食品の配置:健康的な食品を目の高さに配置して、選びやすくします。スーパーマーケットで、健康的なスナックや果物をレジ近くの目立つ場所に配置し、顧客がつい手に取るようにします。

  • エコバッグの使用促進:プラスチックバッグを有料にしてエコバッグを持参するように促します。小売店がレジ袋を有料にし、エコバッグを持参すると割引を受けられるようにすることで、顧客がエコバッグを持参するように促します。

  • エネルギー使用の可視化:家庭のエネルギー消費をリアルタイムで表示し、節約を促します。電力会社がスマートメーターを提供し、顧客がリアルタイムで電力使用量を確認できるようにして、節電行動を促進します。

認知的不協和(Cognitive Dissonance)

認知的不協和とは、自分の信念や態度、行動が矛盾したときに感じる不快感を指します。この不協和を解消するために、人は態度や信念を変えたり、矛盾する情報を無視したりします。

  • 購入後の満足感向上:高額商品を購入した後に顧客が不協和を感じないよう、商品の良さを再確認させます。「あなたが選んだこの製品は、専門家も推奨する最高品質です」とアフターフォローのメールで強調します。

  • エコ製品の購入促進:環境意識の高い顧客がエコ製品を選ぶ理由を強調し、行動と信念の一貫性を保たせます。「このエコバッグを使うことで、毎年数百枚のプラスチック袋を削減できます」と宣伝し、購入を促します。

  • ブランドロイヤリティの強化:顧客が特定のブランドを選び続けることに対する正当性を強化します。「あなたが選ぶこのブランドは、多くの有名人にも愛用されています」と広告で強調し、顧客の選択を正当化します。

ネガティビティバイアス(Negativity Bias)

ネガティビティバイアスとは、人がポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く反応し、影響を受けやすい現象です。ネガティブな経験や情報は記憶に残りやすく、判断や意思決定に大きな影響を与えます。

  • 安全性の強調:製品の安全性を強調してネガティブなリスクを避けるように促します。自動車メーカーが安全性能の高さを強調し、事故のリスクを避けたい顧客にアピールします。

  • 悪い結果の警告:健康リスクや害について、広告などで警告します。禁煙キャンペーンで喫煙による健康リスクを強調し、恐怖を喚起して喫煙者に禁煙を促します。

  • 口コミやレビュー:ネガティブなレビューを防ぐために、高品質なカスタマーサービスを提供します。オンラインショップが顧客サポートを強化し、ネガティブなレビューを避けることで、潜在的な顧客が安心して購入できるようにします。

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《西口一希》

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