4-1-12:生存者バイアス、ゼロリスクバイアス、選択アーキテクチャー

生存者バイアスとは、成功した事例だけを見て、失敗した事例を考慮しないことです。顧客に全体像を誤解させ、偏った判断をさせてしまうことがあります。
4-1-12:生存者バイアス、ゼロリスクバイアス、選択アーキテクチャー

心理学の9分類に続き、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。

本項では優先すべき理論22~24として、生存者バイアス、ゼロリスクバイアス、選択アーキテクチャーを解説します。

生存者バイアス(Survivorship Bias)

生存者バイアスとは、成功した事例や生き残った事例のみを観察し、それらが一般的であると誤解する現象です。失敗した事例が見落とされがちで、顧客に偏った判断をさせてしまうことがあります。

  • 成功事例の強調:成功した顧客の事例を強調することで、製品やサービスの効果を誇張して見せます。「このダイエットプログラムで10キロ痩せた!」といった成功事例のみを広告に掲載し、あたかもすべての顧客が同じ成果を得られているように感じさせ、検討中の顧客にプログラムを選ぶよう促します。

  • ベストセラー商品の強調:売上が好調な商品を強調し、あたかもすべての商品が同じように人気があるように見せます。「ベストセラー1位!」というラベルをつけた商品を目立たせて展示し、他の商品も同様に人気があると顧客に感じさせます。

  • アンケート結果の提示:ポジティブなフィードバックを強調し、製品の満足度が高いように見せます。「90%の顧客が満足!」といったアンケート結果を強調し、実際には満足していない顧客の存在に気づきにくくします。

ゼロリスクバイアス(Zero Risk Bias)

ゼロリスクバイアスとは、人がリスクを完全に排除したいという心理的傾向のことです。少しでもリスクがあると感じると、その選択を避け、リスクがゼロの選択を好むという現象です。

  • 返金保証:リスクを感じさせないために、返金保証を提供します。家電メーカーが「30日間の返金保証」を提供し、購入リスクをゼロにして顧客の購入意欲を高めます。

  • 無料試用期間:リスクを排除するために無料試用期間を設けます。ソフトウェア会社が「14日間の無料試用」を提供し、顧客が安心して製品を試せるようにします。

  • 安全性の強調:製品やサービスの安全性を強調します。食品メーカーが「無添加・無農薬」の表示を強調し、顧客に安全でリスクがないと感じさせることで購入を促します。

選択アーキテクチャー(Choice Architecture)

選択アーキテクチャーは、意思決定の場面における選択肢の提示方法や環境設計を指します。適切な選択アーキテクチャーを設計することで、人々の選択をより良い方向に導くことができます。

  • ヘルシーなオプションの推奨:食品の選択肢を提示する際に、健康的なオプションを目立たせます。カフェテリアで、ヘルシーな食材を目の高さに配置し、ファストフードや高カロリー食品を下段に配置することで、健康的な選択を促します。

  • デフォルトオプションの設定:最も望ましい選択肢をデフォルトに設定し、変更しない限りその選択肢が選ばれるようにします。定期購読サービスで、標準プランをデフォルトに設定し、ユーザーが特に選択を変更しない限り、このプランが適用されるようにします。

  • 選択肢の数を制限:選択肢の数を適度に制限し、顧客が決断しやすくします。シャンプーの種類を3つに絞って展示し、過剰な選択肢の中で迷うことなく、簡単に購入決定ができるようにします。

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《西口一希》

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