

心理学の9分類に続き、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。
本項では優先理論4~6として、エスカレーション・オブ・コミットメント、エンドウメント効果、貨幣錯覚を解説します。
エスカレーション・オブ・コミットメント(Escalation of Commitment)
エスカレーション・オブ・コミットメントとは、既に投資したリソースが無駄にならないように、失敗の兆候があってもさらなる投資や行動を続けてしまう現象です。
サブスクリプションモデル:定期購読を始めると、途中でやめるのが難しくなり、長期的な利用を促します。「最初の3カ月無料」キャンペーンを行い、その後も続けると特典が増えるようにすることで、顧客は続けやすくなります。
メンバーシッププログラム:会員費を支払うと、その特典を活用するために更に購入を続けるようになります。年会費を支払うことで得られる割引や特典を提供し、顧客はその会員費を有効活用するために頻繁に購入します。
プロジェクト投資の増加:初期投資を行った後、追加の投資を促すことでプロジェクトへの関与を深めます。クラウドファンディングで一度支援を始めると、追加のリワードを提供することで、さらなる投資を促します。
エンドウメント効果(Endowment Effect)
エンドウメント効果とは、人は自分が所有するものに対して、所有していないものよりも高い価値を感じる現象です。つまり、所有することでその物の価値が上がると感じることです。
無料試用期間:顧客が一度商品を使用すると、それを手放したくなくなります。「30日間無料試用」のキャンペーンを行うと、顧客はその商品を所有している感覚を持ち、試用期間後も購入する可能性が高まります。
サンプル提供:商品のサンプルを提供し、顧客にその価値を実感させます。コスメブランドが無料サンプルを配布すると、顧客はその製品を自分のものとして認識し、フルサイズの製品を購入しやすくなります。
パーソナライズ商品: 顧客の名前や特定のデザインを入れた商品を提供し、所有感を高めます。オンラインストアで、名前入りのマグカップやカスタムTシャツを販売すると、顧客はそれらの商品に強い所有感を抱き、購入意欲が高まります。
貨幣錯覚(Money Illusion)
貨幣錯覚とは、人々が名目上の金額に重きを置き、実際の購入力やインフレを考慮しないで経済的な意思決定を行う現象です。例えば、給料が上がったと感じて喜んでも、インフレによって実質的な購入力が下がっている場合があります。
給与の名目増加による購入意欲向上:企業が名目上の給与を上げることで、従業員が実際には購入力が上がっていないにもかかわらず、購入意欲が向上することがあります。例えば、新年にボーナスを支給することで、従業員が名目上の収入増加を感じ、消費を促進します。
セール価格の表示:セール時に大きな割引額を名目上で表示することで、実際の節約額に関わらず購入意欲を高めます。「50%オフ!」と大きく表示することで、顧客が実際の節約額よりもお得に感じて購入しやすくなります。
ローンや分割払いのプロモーション:毎月の支払い額を小さく見せることで、顧客が大きな支出をしやすくなります。高額商品の分割払いを「月々わずか5,000円」と宣伝し、顧客が手頃に感じて購入するよう促します。
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