

ここまで、心理学の9分類について、代表的な理論とともに紹介しました。9分類の解説を読んで、意識せずとも普段のマーケティングで実行されていることがあったのではないかと思います。本項からは、改めて、優先して理解しておきたい64の理論を事例を交えながら解説します。先の9分類で代表的な理論として挙げたものも含みます。
本項では優先理論1~3として、アベイラビリティバイアス、アンカリング効果、エゴデプレッション効果を解説します。
アベイラビリティバイアス(Availability Bias)
アベイラビリティバイアスとは、人が意思決定をする際に、直近の情報や記憶に残りやすい情報に強く影響される現象です。例えば、最近ニュースで見た事故の話を聞くと、その事故が頻繁に起こっているかのように感じることがあります。これにより、実際の頻度よりも過大に評価してしまうことがあります。
定期的なメールキャンペーン:企業が定期的に顧客にメールを送ることで、ブランドや商品の存在を常に意識させます。例えば、週に一度、セール情報や新商品の案内を含むメールを顧客に送ることで、顧客はそのブランドを常に意識し、次回の購入時にそのブランドを思い出しやすくなります。
リマーケティング広告:一度訪れたウェブサイトや見た商品に関する広告を、他のウェブサイトやSNSで再度表示することで、顧客の記憶に残します。例えば、オンラインストアで商品を閲覧した顧客が、他のサイトを見ているときにもその商品の広告を見ると、その商品を再度考慮し、購入する可能性が高まります。
ソーシャルメディアでの頻繁な投稿:SNS上で定期的にブランドや商品の情報を発信することで、フォロワーにそのブランドを常に意識させます。例えば毎日、新商品の情報やキャンペーン情報をInstagramやXに投稿することで、フォロワーはそのブランドを頻繁に目にし、購入意欲が高まります。
アンカリング効果(Anchoring Effect)
アンカリング効果とは、最初に提示された情報がその後の意思決定に強い影響を与える現象です。初めに見た価格や情報が基準となり、その後の評価や判断が左右されます。
価格表示:高額商品を最初に見せることで、次に見る商品の価格が割安に感じられます。高級車を見せた後に中級車を見せると、中級車が非常にお得に見えるため、購入意欲が高まります。
セール価格:元の価格を強調することで、割引後の価格がより魅力的に見えるようにします。「元の価格1万円が今だけ5,000円」という表示は、顧客にとって大幅な割引に見え、購入意欲を高めます。
数量限定セール:限定数や期間を強調することで、顧客の即決を促します。「先着100名様限定」とすることで、顧客はその制限が基準となり、急いで購入しようとします。
エゴデプレッション効果(Ego Depletion Effect)
エゴデプレッション効果とは、自己制御や意志力が使い果たされると、その後の意思決定や行動に影響が出る現象です。長時間の集中やストレスにより意志力が低下し、衝動的な行動が増えることがあります。
衝動買いを促す:レジ付近に小さな商品を配置し、長時間のショッピング後に衝動買いを誘導します。スーパーのレジ横にチョコレートやガムを置くと、買い物後の疲れた顧客がつい手に取ってしまいます。
ストレス緩和商品:長時間の仕事やストレスの後にリラックスできる商品を提案します。オンライン広告で「仕事終わりにリラックスできるアロマキャンドル」を勧めると、ストレスを感じている顧客が購入しやすくなります。
簡単な購入プロセス:長時間の決断の後に、簡単に購入できるプロセスを提供します。ワンクリックで購入できるオプションを提供することで、顧客は意思決定の疲れから解放され、購入しやすくなります。
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