
2割の成功と8割の失敗
講演やオンラインサロンなどでマーケティングの実践者に話を聞くと、「N1分析に挑戦しているけれど、成果が出ない」という相談をいただくことがあります。
詳しく話をうかがえば、それぞれに原因や背景が考えられると思いますが、確実に言えるのは、100%の確率で成果を出し続けている人はいないということです。 これは筆者も著書や取材でよく言っていることで、マーケティングに百発百中はありません。これまで常勝という人は私の知る限り、1人もいません。
もちろん筆者自身もそうですし、周りの優秀なマーケターもそうです。公表していないとしても、多くのマーケターがたくさん失敗し、たくさん失敗から学んでいます。
筆者もたくさん失敗し、そのつど、夜も眠れないほど悩んできました。とくに20代から30代にかけては失敗の経験からメンタルも体調もボロボロだった時期もあります。失敗した痛みは誰にも負けないくらい経験していると思います。
28歳のときには、あるプロジェクトで大失敗し、当時在籍していたP&Gに何十億円もの損失を与えることになりました。これは筆者の中で強烈なトラウマとして残りました。その後もさまざまなブランドを担当しましたが、何年間も当時の失敗を引きずり、「なぜ失敗したのか?」と自問しながら過ごしました。
筆者の中でうまくいかなかった事例は約8割、うまくいった事例は2割程度です。
この2割の成功の売上や利益の貢献が非常に大きいため、8割の失敗の損失を大きくカバーしているのです。
前出のケーススタディでは、アサヒビールの松山社長からもP&G在籍時にリンスインシャンプーのフルリニューアルのプロジェクトで失敗されたという話で、「生身の人間に対する解像度を上げて、顧客の心を動かさなければ、どんなに数字が成功を物語っていても失敗する」ことを実感されたとおっしゃっています。
顧客自身が理解している以上に、顧客を理解する
マーケティングは、「お客様をお客様自身が理解している以上に理解すること」に尽きます。
筆者自身の過去の失敗も、振り返ってみれば顧客を見誤っていたとき、その理解が浅いときが、ほとんどです。だからこそ、顧客について理解し直し、施策を考え直したところ、うまくいったケースも数多くあります。
周りで結果を出し続けているマーケターを見ても、「顧客視点」を強く持つ人ばかりです。
BtoC、BtoBを問わず結果を出しているマーケターはみな、人間に強い興味や関心を持っています。常にいろいろなプロダクトに興味を持ち、それに対して人がどう反応しているのか、なぜこの商品が売れているのかとよく考えています。人への興味を持ち続け、世の中のあらゆるプロダクトについて好奇心を持つことが、マーケティングで結果を出す素養であると言っても過言ではありません。
これは「結局、マーケティングは何からはじめるべきか」という問いの答えにも重なります。その答えは、ここでも「顧客を誰よりも顧客自身よりも理解する」ということです。
そして、使い続けてくださるロイヤル顧客に話を聞くこと。オフィスから離れて、あなたのプロダクトを長く買い続けてくださっている、しかも単価が高いものを高頻度で買ってくださっているお客様の話を聞きに行っていただきたいです。
自分の顧客は、今どの状態にいるのか
どんなときも、まずはお客様と向き合うこと。 自らお客様と向き合って何が顧客の価値になるのかを考え、仮説をつくり、施策に落とし込み、それを実行して、失敗したらそこから学んでいくしかないのです。
このことはマーケティング担当者に限らず、営業担当者も同じです。
たとえば、あなたがBtoBの営業担当で5社のクライアントを担当しているなら、それぞれのクライアントに価値が成立するWHOとWHATの組み合わせは何かを考えてみてください。
もし自分の売上が伸びていないとしたら、どこに問題があるのか、前出の「ストラテジーマップ」(図)をもとに考えてみます。1回購入してくださったA社は、なぜ再購入してくれないのか。価値の再評価が行われなかったのはなぜか。また、新規開拓できるとしたら、どのWHOとWHATなのか、それに惹かれる顧客はどんな顧客で、どこに訴求したらいいのか。

優れた営業パーソンはみな、自分が売るプロダクトのどこにお客様が価値を見出すかをきちんと理解していて、それをきちんと訴求しています。
そのような営業パーソンのプレゼンテーションは、非常にシンプルでわかりやすいです。一方、営業で苦労している方は商品の説明が長く、要素を盛り込み過ぎています。なぜなら、顧客が価値を感じるWHOとWHATの組み合わせが見えていないから、とりあえず、あらゆる要素をすべて説明してしまうわけです。
営業の方も、ぜひ「ストラテジーマップ」を使って、自分のお客様が今どの状態にいるのか、どこで行き詰まっているのかをしっかり把握してみてください。
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